研究課題
平成29年度は、弘前大学大学院医学研究科病態薬理学講座および北海道薬科大学薬剤学分野と共同で、「糖尿病」を切り口として幾つかの研究を遂行した。先ず、2型糖尿病モデルラット(Goto-Kakizakiラット)はコントロールであるWistarラットと比較し、糖尿病性ニューロパチー(末梢神経障害)に起因する自律神経系異常、圧反射低下および高用量アトロピンに対する反応性の低下を呈することを見出し、Goto-Kakizakiラットが糖尿病性ニューロパチーに起因する慢性循環器疾患病態のモデル動物となる可能性を提示した。糖尿病性ニューロパチーとアルツハイマー病をはじめとする認知症の関係については、関連性を示唆する多くの原著論文や総説報告がある一方で、その実態については未解明な点も多く残されているのが現状である。また、糖尿病の根本的対処薬インスリンについて、非侵襲的投与法の発展を図るべく、経肺的アプローチに基づく検討を行なった。ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を付与したエアゾール型リポソームへインスリンを封入させることで、肺胞粘膜層の細胞間隙の拡大に伴うインスリン吸収の増加が得られること、当該リポソームによる粘膜細胞障害は認められないことを見出した。経肺経路は経口投与と異なり肝による初回通過効果を受けない投与経路であるため、当該リポソームにインスリンと共に認知症治療あるいは予防効果を持つ成分を封入することで、糖尿病患者における認知症発症の予防に貢献できる可能性がある。
3: やや遅れている
平成29年度は所属機関の異動およびそれに伴う業務内容の変更により研究環境が劇的に変化した。そのような当初予期していない状況下ではあったが、弘前大学大学院医学研究科病態薬理学講座および北海道薬科大学薬剤学分野の協力により、一定の知見を得ることができた。
上記の、弘前大学大学院医学研究科病態薬理学講座および北海道薬科大学薬剤学分野との糖尿病関連研究については継続して進めていく。加えて、北海道医療大学と固体レベルのアルツハイマー病解析研究について新たな連携体制を構築し、研究を推進していく予定である。
平成29年4月の札幌医科大学への異動に伴い、主たる職務が研究支援業務である産学連携業務へと変わり、次年度使用額が生じた。一方で、札幌市の北海道科学大学および北海道医療大学に属する研究者と共同研究体制を構築することができたため、次年度消費額を学外研究協力者との共同研究の遂行に必要な消耗品に充てていく計画である。
30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Hirosaki Med. J.,
巻: 68 ページ: 33~43
Drug Dev. Ind. Pharm.,
巻: 43 ページ: 1892-1898