結晶粉末(10~100 mg)を検出できる持ち運び可能なNQR装置の開発を目指し、平成28年度から引き続き、可搬型試作装置の開発を行った。 FPGA上にAltera社のNios II プロセッサを構築することで、PC制御が不要な小型NQR装置の試作をすすめ、NQR信号検出シーケンスの一つであるStrong off-resonance comb (SORC) シーケンスの実装を試みた。また、新たなNQR信号検出方法として、高速周波数掃引を用いたNQR装置の開発を進めた。高速周波数掃引を行うには、NQR検出に用いるプローブの共振周波数を送信周波数に追従する必要があり、これまで実現していなかった。共振周波数の自動制御は、目的の周波数において50Ωの抵抗とリアルタイムに比較することで行った。NQRプローブのインピーダンスが50Ωになると、目的の周波数においてリアクタンス成分がゼロとなり、プローブがその周波数数において共振していることを意味する。インピーダンスの比較にはブリッジ回路を用い、平衡状態からのずれを電流として検出することにより、NQRプローブのインピーダンスを50Ωに制御することに成功した。NQRプローブのインピーダンスの調整には、2つの可変容量ダイオードを用い、逆バイアス電圧を印加することで行った。その制御信号は、平衡状態のずれにより生じる電流を高速ADCで検出し、デジタル信号処理により摘出した振幅と位相情報から生成した。期間全体では、結晶粉末(10~100 mg)を検出できるNQR装置の開発を実施し、二重共鳴法を用いることによりNQR信号強度は、解熱剤であるアセトアミノフェンの場合 7倍、経口糖尿病治療薬であるメタホルミン塩酸塩の場合 17倍、医薬原料であるジエチルアミン塩酸塩の場合9倍にそれぞれ増加し、目標としていた100mgグラム以下での検出が可能となった。
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