研究実績の概要 |
平成27年度は,最初に高潮解析における重要なパラメータの一つである最大風速半径について,詳細に検証を行った。北西太平洋を通過する台風については,これまで中心気圧をもとに推定する手法が使われてきたが,本研究では沖縄や鹿児島の諸島の観測所データおよびベストトラックデータを分析することで,暴風域半径が最大風速半径の推定にさらに有効であることを示し,成果を国際ジャーナル(Nat. Hazards Earth Syst. Sci.)で発表した。この手法を用いることで,ベトナムを含む北西太平洋の高潮解析の精度が向上すると期待する。また, メコンデルタ都市部の洪水の実態を明らかにするため雨季の時期に住民インタビューを実施するとともに,洪水氾濫を予測するための数値モデルを構築し,現地調査で得られた結果と比較することでモデルの精度検証を行った。同モデルを使用して洪水時の水位や流速について分析を行い,特徴を明らかにし,成果を国際ジャーナル(Hydrological Research Letters)で発表した。さらに, 海面上昇と地盤沈下を考慮した複数の水位上昇シナリオを想定し, 将来氾濫域がどのように変化するかを予測した。カントー市の道路総延長に対する氾濫の割合は, 現在はまだ限られた範囲である。しかし,今後水位上昇(海面上昇+地盤沈下他)が進むと,40 cmの水位上昇で,乾季では7.1 %, , 雨季では81 %の道路延長が浸水すると予測された。また,2013年フィリピンを襲った台風Haiyanの数値的検証を行い,市街地を氾濫する高潮による洪水流について重要な知見を得ることができた。この内容についても,国際ジャーナル(Coastal Engineering)で発表することができた。
|