研究課題/領域番号 |
26702013
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松元 亮 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (70436541)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ボロン酸 / シーケンサー / ピロリン酸 |
研究実績の概要 |
今年度、我々は、11Bおよび31P NMRによる評価から、比較的酸性度の高いタイプ(pKaが7以下)のボロン酸が、PPiとその一部の誘導体と特異的かつ可逆的(結合定数~103 M-1)に結合することを見いだした。その結合の強さと選択性はpH依存的であり、いずれも弱酸性領域(pH5-6)で最大化する。興味深いことに、一リン酸や三リン酸とは全く結合せず、塩濃度依存性も(500 mM NaClまで)観測されなかった。いくつかの重要な有機リン酸化合物(ATP, dATP, ADP, dADP)との結合性を調べたところ、リボースを持つATP、ADPとのみ結合し、二リン酸-ボロン酸間の特異的な結合は観測されなかった(dATPと結合しないことはパイロシークエンシング等の応用には朗報である)。一方、ヌクレオシド類似体(代謝拮抗剤)の一種であるゲムシタビンの二リン酸付加体(すなわち活性体)においては、二リン酸-ボロン酸間の結合が確認された。これらの比較から、当該分子認識においては、分子同士の立体効果が重要な決定因子として提案される。さらに、二リン酸との特異的結合性が見いだされたボロン酸誘導体を頭部構造とする自己組織化単分子膜を合成し、これを金表面に導入することによる「ピロリン酸検出電極」を作製し、これによるピロリン酸選択的な電位測定にも既に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二リン酸との特異的結合性が見いだされたボロン酸誘導体を頭部構造とする自己組織化単分子膜を合成し、これを金表面に導入することによる「ピロリン酸検出電極」を作製し、これによるピロリン酸選択的な電位測定まで成功しており、当初の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、核酸増幅反応(PCR)の産物ピロリン酸の検出を検討する。この際、PCR反応の溶液条件の検討、反応ー検出操作分離の必要性などを併せて検討する。ついで、プローブDNAを修飾した磁性微粒子補足のためのウェル構造を備えた多チャンネル電極アレイを外部発注により作製し、これを流体制御デバイスと組み合わせ、DNAポリメラーゼの作用により生じるピロリン酸検出の評価を開始する。流体制御システムや多チャンネルかつリアルタイムの電位計測系は、研究室内に保有する設備を活用して行なう。磁性微粒子に対するプローブの固定化は既報の方法を参考にして行なう。測定結果の信頼性向上のため、一種類のプローブ固定化微粒子を最大10箇所程度のウェルに配し、集積化のメリットを最大化するための統計的処理法についても検討を行う。使用するDNAポリメラーゼに関しては、現在、様々な至適pH・温度を有するものが市販または研究レベルで報告されている。これまでに見いだした「ピリジルボロン酸―ピロリン酸の結合」の強度ならびに選択性は弱酸性条件(pH5-6)で最大化するため、これに留意して最適なものを採用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、サブミクロンサイズの微粒子やそれと同程度のピッチを有する電極アレイを液中で効率的に観察・評価する手段として、液中での観測が可能な(比較的高額である)原子間力顕微鏡装置の導入を予定していたが、採択時の減額配分に留意して、予算計画を変更し、これを取りやめた。変更分を、研究推進の効率化を図るため人件費等に当てて対応したが、その差額として繰越が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、必要かつ十分な人件費ならびに物品費に充てることにより、さらなる研究推進の効率化を図る。
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