研究課題/領域番号 |
26702014
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
氏原 嘉洋 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80610021)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心筋細胞 / カルシウム / T管膜 / Na+/Ca2+交換体 / 心筋リモデリング / 心不全 / 細胞バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
心筋細胞は、収縮・弛緩に特化した終末分化細胞である。心筋細胞のT管膜構造は、形質膜の陥入特殊構造であり、形質膜の膜電位の変化を細胞内のCa2+変化、収縮装置の収縮・弛緩に高効率に変換するために必須の構造である。不全心筋細胞では、T管膜構造が崩壊し、収縮率の低下の一因と考えられているが、その崩壊メカニズムはほとんどわかっていない。本研究では、心筋細胞のT管膜局所のCa2+管理機構の分子基盤と生理的意義に注目し、T管膜構造の維持機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、マウスの大動脈に縮窄手術を行うことで左心室に過大な圧力負荷を与えた心不全モデルを用いて、心不全進行過程におけるT管膜構造の崩壊過程を調べた。従来よりも、長期間かつ短い間隔で心不全の進行過程を観察することで、心臓のマクロな形態や組成の変化、心臓のポンプ機能の変化、細胞の形態および収縮率の変化、T管膜構造の変化、Ca2+ハンドリングタンパクの局在や発現量の変化、収縮・弛緩を制御するCa2+ハンドリングの変化を関連づけることが出来た。従来より使用してきたCa2+計測系に改良を加えたことで、実験に必要な感度、時間・空間分解能に適した計測系を用いることが可能になり、効率的にデータを収集出来た。 生体内の心筋細胞に作用する力学的負荷を明らかにするために、前段階として、線形弾性体でモデル化した組織モデルと細胞骨格、核、細胞膜をモデル化した細胞力学モデルを組み合わせて、組織が変形する際に細胞に作用する変形量を推定できるモデルを構築した。数値実験の結果、組織のヤング率の上昇にしたがって、細胞の構成要素の変形量が増大することを確認した。心不全の進行過程では、心筋組織のヤング率が上昇することから、心筋細胞のT管膜に作用する負荷も増大していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来より使用していた複数のCa2+計測系を改良し、必要な感度、時間分解能、空間分解能に合わせて計測系を使い分けることで、効率よく実験データを取得することに成功した。今年度予定していた、大動脈縮窄手術による心不全進行過程における心臓のポンプ機能、心筋細胞の収縮能、T管膜に局在する膜タンパクの発現量と局在の変化を4か月もの長期にわたって経時的に計測し、関連付けることが出来た。組織が変形した際の組織内の細胞、および細胞の微細構造に作用する力を推定することが可能な計算モデルの基盤を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度改良した独自のCa2+計測系を生かし、心筋細胞の特殊微細構造であるT管膜構造と細胞内Ca2+の関係性を引き続き調べる。当初の予定通り、異なる心不全モデルや遺伝子改変マウスを使った実験を増やす。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、今年度の研究を効率的に推進したことにより消耗品の購入を抑制できたこと、学術論文の発表の遅れたことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度請求額とあわせ、交付申請書に記載した内容に沿って平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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