研究課題/領域番号 |
26702015
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高山 祐三 独立行政法人産業技術総合研究所, 幹細胞工学研究センター, 研究員 (60608438)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再生医工学 / 糖尿病 / 微細加工 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では「神経インターフェース技術により膵b細胞のインスリン分泌を制御する手法開発とデバイス化」を目的としている。幹細胞から膵b細胞と自律神経細胞を作製・共培養を行い,電気刺激による神経細胞活動制御を介した膵b細胞のインスリン分泌制御を目指す。更に両細胞を用いた3次元デバイス化を行い, 糖尿病治療のための生体組織移植デバイスとして発展させることも視野に入れている。 初年度においては膵b細胞と自律神経系との神経インターフェース構造作製のための材料となる各細胞種の作製を主に試みた。まずはマウスの線維芽細胞に対してエピジェネティクス状態を変化させる、もしくは特定シグナリングを阻害する低分子化合物を作用させることで神経細胞を含む数種の細胞種に分化可能な多分化能細胞を誘導する技術について開発を試みている。神経系細胞への誘導を行った細胞に関して神経系マーカーによる免疫染色やPCRによる遺伝子発現解析を行うことで提案手法の有効性を確認している段階である。また、神経系細胞以外にもどのような分化能を有しているかについても実験と解析を行っており、誘導した多能性細胞の素性を明らかにしつつある段階である。この手法については現在論文化の準備を進めている。 上記の手法は操作の容易さ・安全性等の面で既存の遺伝子導入法と比較して優位性があるが、現状ではマウス細胞でのみ有効性を得ており、ヒト細胞ではデータを得ていない。移植デバイスおよび創薬支援などへの応用を目指すにはヒト細胞による神経インターフェース構造の作製が必須となることより、上記の手法と並列してヒトiPS細胞の培養と分化実験系の確立を今後行う予定である。 また、神経インターフェース構造や3次元デバイス作製に必須となる微細加工設備および検査のための顕微鏡システムの立ち上げを初年度の予算を用いて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度においては神経インターフェース構造作製のための材料細胞をマウス線維芽細胞より低分子化合物を用いて誘導する新規手法について目途を立てることができた。また、ヒト細胞による検討を行うためにヒトiPS細胞実験系についても立ち上げを行い、2年度目以降における実験基盤の構築も行えた。また、初年度の予算によりインターフェース化、3次元化に必要な微細加工実験系の立ち上げを行うこともできた。以上の点より、初年度の研究は順調に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においても引き続き材料となる細胞誘導実験系の構築を行い、特にヒト細胞での実験を行うための低分子化合物添加の最適化・ヒトiPS細胞からの分化誘導系の確立を目指す。 また、誘導した細胞による神経インターフェース化を行うための微細加工実験系についても並行して行い、細胞パターニング、共培養チャンバー等の設計と試作を行い、順調に研究が進展した際には実際に誘導した細胞を導入した実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度計上した金額は主に微細加工設備立ち上げに必要な設備費と細胞実験および微細加工に必要な試薬類であったが、本若手研究(A)申請の基盤となった研究活動スタート支援時からのテーマであるマウス細胞に対する低分子化合物実験に主に注力したため、試薬類の注文に予定よりも余裕が生じた。 また、初年度後半においてヒトiPS実験系の立ち上げを行い、次年度以降においてへヒトiPS実験系の維持に多額の細胞培養関連消耗品類が必要となると考えられるため、生じた余剰分に関しては次年度以降の使用計画に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降ではヒトiPS細胞をはじめとしたヒト細胞を用いた細胞誘導実験が主になるため、細胞培養関連試薬および誘導細胞の詳細な解析のための遺伝子解析の外注に多額の予算が必要となると考えている。次年度の予算は主に以上の計画に使用する予定である。
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