研究課題/領域番号 |
26702016
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
干場 隆志 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (00469769)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / タンパク質吸着 / 肝細胞 / 間葉系幹細胞 / インテグリン |
研究実績の概要 |
再生医療の実現には細胞機能の制御が重要であり、培養基板の開発は重要である。本研究では、培養基板表面がリモデリングされることにより細胞機能を発現する培養基板を作製する。また、細胞機能を制御できる培養基板設計のための新たな指針を得る。特に本研究では埋め込み型バイオハイブリッド人工肝臓に向けた肝細胞の機能維持と、再生医療の重要な細胞源である幹細胞の分化制御を可能とする培養基板を作製する。 H27年度は、PMEA類似体上においてHepG2細胞が肝機能を維持するメカニズムの解析および発現する細胞外マトリックス(ECM)遺伝子の解析と、ヒト間葉系幹細胞(MSC)の機能解析を行った。 HepG2はPMEA類似体の一つであり、タンパク質を中程度吸着させるPTHFA上やよくタンパク質を吸着させるPET上では、伸展し、YAPタンパク質が細胞核内に移行していた。一方で、タンパク質の吸着量が少ないPMEA上ではYAPは細胞質内に分散していた。YAPの核移行は肝機能の低下を誘導することが報告されていることから、PMEA上での肝細胞の機能維持はYAPの核移行阻害によって生じていることが示唆された。さらにPMEAおよびPTHFAという2種類のPMEA類似体上および細胞培養用ポリスチレン上でのECM遺伝子の発現量を評価したところ、PMEA上ではラミニンの発現量が亢進していた。メカニズム等の更なる解析が必要である。 MSCを種々のPMEA類似体上で培養したところ、3T3-L1細胞と同様に細胞の伸展抑制および、インテグリンを介さない接着機構が観察された。MSCの骨/脂肪分化は細胞形態に強く影響することが知られており、MSCでもタンパク質の吸着量が異なるPMEA類似体上で分化能が異なることが期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度およびH27年度までに肝細胞および間葉系幹細胞のPMEA類似体上における機能については、ほぼ明らかにした。また、肝細胞についてはそのメカニズムについても明らかにすることができた。 さらに、当初の予定であるECMの発現の制御についても、肝細胞においてPMEA類似体を用いることにより、その発現量を変化させることができた。また、予備実験ではあるが、そのメカニズムについて示唆するデータを得ている。そのため、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度では、培養界面のリモデリングの解析に集中するために、H27年度に観察された肝細胞が発現するECM遺伝子の違いについてより詳細に解析する。タンパク質の吸着量が大きく異なる3種類の培養基板であるPMEA、PTHFA、細胞培養用ポリスチレン(TCPS)(タンパク質吸着量:PMEA<PTHFA<TCPS)上におけるECM遺伝子の発現量を調べるとともに、沈着したタンパク質を特にラミニンに注目してその量を定量する。 また、ECM遺伝子の発現量の変化が生じるメカニズムを明らかにするために、細胞骨格に注目した解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度はプレートリーダーを購入予定であったが、予定よりも安価に購入することができた。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
分子生物学実験に使用するための設備を整備するために、主に微量冷却遠心機を購入するための費用とする。
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