研究課題
同種あるいは異種細胞同士間の細胞間相互作用は、発生から免疫反応であるいは癌の転移現象など、ほとんどすべての生命現象で中心的な役割を担う基本現象の一つである。本研究では、同種あるいは異種細胞間で起きる生物学的な細胞間相互作用を調べる材料開発とその手法の確立が目的である。疎水性相互作用により細胞膜へ導入される両親媒性高分子であるポリエチレングリコール結合脂質(PEG脂質)と単鎖DNAが結合したssDNA-PEG脂質を合成し、ジッパー状分子として、様々な細胞の表面修飾に利用した。相補配列を有する単鎖DNAであるpolyA20とpolyT20の組み合わせを利用することで、同種あるいは異種細胞の接着を誘導でき、その表面修飾率によりその接着状態を制御できることを見出している。ジッパー状分子を利用して、正常細胞とガン細胞同士の細胞接着を誘導し、細胞同士の相互作用を詳細に調べたところ、正常細胞がガン細胞内部へ取り込まれる現象がわかり、この相互作用は、E-カドヘリンが大きく関与して起きる反応であることがわかった。また、ジッパー状分子を用いて細胞同士の接着を強く誘導した場合に、この現象が多く見られることから、異種細胞同士の特異的な相互作用によるものであることが分かった。また、細胞融合を引き起こすジッパー状分子の設計に着手しており、接着海面の距離を制御するため、様々なDNA配列とDNA鎖長、PEG鎖長を用いて検討した。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、概ね実験計画通りに進展している。異種細胞同士の細胞間相互作用を詳細に解析でき、次に、細胞融合を研究に着手できている。
今後は、細胞融合を引き起こすジッパー状分子の設計を引き続き行う。PEG鎖長やDNA鎖長の異なるssDNA-PEG脂質を用いて、細胞同士の接着挙動を調べ、特に細胞同士の距離にどのような影響を与えるのかを調べる。その際に、平面脂質膜モデルを用いて、共焦点レーザー顕微鏡あるいは全反射型顕微鏡を用いて、その界面を観察し、細胞同士の接着界面を調べることで、細胞融合につながる情報を取得することを目指す。
分子量の異なるジッパー状分子の合成には高額な試薬が必要であるが、その合成が予想とは異なり困難であったため、実験条件の検討が必要であり、予定よりも多くの試薬を必要とした。
合成条件を小スケールで再検討し、効率的にジッパー状分子の合成を完了させる。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件)
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