研究課題
同種あるいは異種の細胞間の相互作用は、発生から免疫反応あるいは癌の転移現象など、ほとんどの生命現象で重要な役割を担う基本現象の一つである。本研究では、同種あるいは異種の細胞間で起きる生物学的な細胞間相互作用を調べる材料開発とその手法の確立が目的である。脂質二重層である細胞膜と疎水性相互作用する両親媒性高分子(例えば、ポリエチレングリコール結合脂質の誘導体)に、細胞同士の接着を誘導する単鎖DNAを結合したジッパー状分子を合成し、同種あるいは異種の細胞同士を接着させ、細胞間相互作用や細胞融合を検討してきた。本年度では、平面二分子膜のモデル細胞膜を用いて、細胞同士の接着や融合過程を詳細に検討することを目的とした。ここでは、リポソームのベシクル融合法を用いて、平面脂質膜モデルを作成し、共焦点レーザー顕微鏡ならびに全反射蛍光顕微鏡により細胞との接着と融合を観察し、その過程を観察した。PEG脂質により短鎖DNAを導入した細胞は、相補配列を有するDNA'を導入した平面二分子膜に選択的に接着して、細胞の接着が見られた。この細胞の接着反応は、DNA同士のハイブリダイゼーションによる特異的な反応であることを確かめた。また、その細胞接着では細胞がDNA同士のハイブリダイゼーションの形成に伴い、大きく進展していくことが分かった。これは、細胞同士の接着と同じ現象が起きていることが分かり、平面二分子膜モデルが実際の細胞膜を反映していることが分かった。ただ、細胞融合が起きるまで接着が進行せず、接着するにとどまっていたことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
おおむね予定通りである。
ジッパー状分子の最適化を、昨年から引き続き検討し、PEG鎖長を変化させだけでなく、接着界面の距離を短くできるジッパー状分子の設計に取り組む。また、膜融合に関与しているSNAREタンパク質の構造を模倣した、DNA配列も利用する。また、MEMS技術を用いて、マイクロウェルアレイによる細胞配列に取り組み、ジッパー状分子による2個の細胞接着を高効率に誘導することを目指す。ガン化した上皮系細胞(MCF7)と正常の上皮細胞(MCF10A, 緑色)を、ジッパー状分子を用いて接着させ、細胞同士の相互作用を観察する。また、この転移モデルの確立を目指すため、ジッパー状分子の最適化(PEG鎖長や糖鎖の最適化)を行う。タイムラプス顕微鏡を用いて、細胞接着から細胞内への取込み速度を定量化し、最適な分子構造を決定する。
研究が概ね順調に進み、一部計画を効率的に変更できたため。
次年度使用額を有効に使用するために、実験項目を増やして条件検討を詳細に行うことにする
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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