研究実績の概要 |
初年度となる平成26年度は生分解性ポリマーカプセルからの薬剤放出の実証実験を進めた。生分解性ポリマーの分解速度はポリマーの結晶化度および表面構造により変化する。フェムト秒レーザー照射による分解速度制御を目的として、蛍光分子を内包した生分解性ポリマーカプセルを用いた実証実験に着手した。同軸二重管を使用したエマルジョン法により蛍光分子(ゲスト分子)を内包した直径10 - 80ミクロンの乳酸・グリコール酸共重合体(polylactic-co-glycolic acid, PLGA)カプセルを作製した。ガラスベースディッシュに上記カプセルを散布し、近赤外のフェムト秒レーザー (中心波長800 nm,パルス幅80 fs,繰り返し周波数1 kHz) を照射した。照射後のカプセルの形状変化を走査型電子顕微鏡 (Scanning Electron Microscope, SEM) により観察したところ、カプセル表面に微小な凹部が多数みられた。この凹部周囲にナノスケールの溶融と凝固が観察され、フェムト秒レーザーによる結晶構造の変化が示唆された。この物理を明らかにすることを目的とし、フェムト秒レーザーと生分解性ポリマーの相互作用を実験により調べたところ、照射条件によりポリマーの改質、アブレーション、ナノスケールの表面微細構造の生成が観察された。ナノ秒レーザーでは、ナノスケールの表面微細構造が生成する実験条件は得られなかった。以上より、本年度は生分解性速度を変化させる改質もしくは表面構造変化がフェムト秒レーザーにより誘起できることを明らかにした。
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