最終年度となる平成29年度は、薬剤放出機能を備えた足場構造の作製に取り組み、放出分子内包カプセルを含有する三次元構造の作製、フェムト秒レーザーをトリガーとした薬剤放出量の計測、照射条件の最適化を実施した。昨年度までに作製方法の確立と最適化を実施したポリ乳酸グリコール酸共重合体をマイクロカプセルとして使用し、マイクロカプセル内部にゲスト分子として2 MDaのFluorescein isothiocyanate (FITC)-dextranを内包させた。このマイクロカプセルを足場材料であるゼラチン内に分散し、ゼラチンを重合することで薬剤放出用の足場構造を作製した。フェムト秒レーザーパルスを照射した後に放出分子の定量化を行ったところ、レーザー照射直後から1時間後までに放出された蛍光分子量は、レーザー照射をしていない条件と比較して高い値となたt。さらに、レーザー照射のタイミングによって、薬剤放出が開始される時間が変化することが示された。以上より、レーザーをトリガーとした足場構造からの蛍光分子放出が実験実証された。また、レーザー照射後のマイクロカプセルをゼラチンから分離して電子顕微鏡による表面観察を行ったところ、レーザー照射によりマイクロカプセルの表面形状変化ならびに外殻への穿孔が確認された。フェムト秒レーザーと生分解性ポリマー相互作用と生分解性変化の検証実験より、この表面形状変化は生分解性変化を誘起すると考えられる。このため、本手法がバーストリリースだけでなく薬剤徐放にも寄与しうると期待できる。また、表面形状変化は細胞接着にも影響するため、レーザー照射による細胞接着変化を調べたところ、多数の小孔作製もしくは凹凸作製により細胞種によっては接着が促進されることが示された。以上の成果を本年度は2編の原著論文、1編の解説論文、3件の招待講演、等にて発表した。
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