今年度は前年度に開発した口腔インターフェース試作二号機と口腔部感覚運動能力の基礎実験結果に基づいて、改良版である口腔インターフェース三号機、及び、介護医療ロボットを設計開発し、ベッド周辺での活動支援を行う統合システムを完成させた。本研究の目的は、口腔内に装着可能な入出力装置(口腔インターフェース)を用いてヒトの感覚運動能力を拡張し、介護機器を身体の一部のように制御するための訓練方法を介護福祉学、生体力学、神経生理学、リハビリ医学の観点から明らかにすることである。この目的において、(1)口腔インターフェース三号機では、運動計測の機能向上させるための新しい計測方式を導入したことで、利用者の姿勢変動に依存せずに口腔内の操作部位の操作情報が取得可能となり、デジタル信号処理によるノイズ削減によって運動計測の信頼性が向上した。さらに、口腔内の感覚運動機能を効果的に引き出すための操作機器として、(2)介護医療ロボットを新たに開発し、口腔インターフェースと介護医療ロボットによる新しい自立介護の方法を実現した。被験者実験を通して、ベッド上に滞在する利用者が口腔部の感覚運動機能のみを用いて、遠隔地の介護医療ロボットが検知した環境状況を知覚し、介護医療ロボットの行動が操作できることを検証した。口腔部の感覚運動機能による介護医療ロボットの知覚操作は、ベッド環境から容易に移動できない利用者のテレプレゼンスや、ベッド環境から離れた活動を実現できる点で非常に意義が深い。また、日本ALS協会の協力を得て臨床試験を行い、運動機能が目や口腔内に限られた患者においても、本研究の技術に高い利用性とニーズがあることが分かった。
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