本研究では持久系動作の動力学解析も可能な動作計測システムを開発することを目的として研究を実施した。申請者は平成23-25年度においてスキー動作を測定可能な広範囲動作計測システムを開発した(若手(B))。本研究はこれを発展させるものであり、平成26年度はセンサ分解能の向上、DCオフセットの補正方法の改良、ゲインおよびセンサの取り付けアライメントの補正の追加を行った。平成27年度は校正装置を作成し、更なる姿勢測定精度向上をおこなった(投稿準備中)。最終年度である平成28年度は、センサを付けた被験者がフォースプレート上で動作を行い、計測されたセンサデータと力データの力学的整合性を取るように質量を推定することを行った。また、ランニング動作を対象に力推定および動力学解析を行った。その結果、スプリント走においては着地時の振動による加速度が非常に大きく、センサのレンジオーバーが生じることから、現状のセンサでは解析ができないことが判明した。そこで加速度がレンジ内に収まり、かつ、研究目的を本質的に修正の必要がないスキー動作を対象に力推定を行った。最終的な結果として、質量や慣性モーメントが小さいセグメントについては各種パラメータを文献値から取得し、体幹等の大きいセグメントについては個人ごとに推定値を計算することが適当と考えられる結果が得られた。なお、機器開発後の1月以降には10名の陸上選手を対象にインターバル走を計測し、疲労による動作変容の計測に成功した。その他、6名のスキー教師を対象としたスキー動作の計測にも成功した。今後、本技術を基盤に、様々な動作を対象にこれまで難しかった力学分析を含む広範囲計測・分析を行い、スポーツ科学分野の発展に貢献できるよう更なる研究を行う予定である。
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