今後の研究の推進方策 |
今後は,他者行為の理解のコアシステムであるミラーニューロンを含めた中枢メカニズムの解明に着手する予定である.近年,運動観察中の脳活動を調査した研究では,運動観察力が高い者は,後部島皮質に特異的な活性があることが報告されている (Aberuら, 2012).後部島皮質は筋運動感覚の処理に関与する (Karnathら, 2010).よって,この部位が運動観察力の個人差に関わる中枢メカニズムと想定できる.しかし,高次運動野など筋運動感覚処理に関わるその他の脳領域 (Naitoら, 1999)でも運動観察力の個人差を示す特異的な活動が生じると予想される.そこで本年度は運動観察時の脳波を測定し,特定の脳波周波数帯域の同期・脱同期現象 (Pfurtscheller, 1999) から運動観察中の筋運動感覚処理に関わる脳部位を同定し,脳波コヒーレンスから脳部位間の機能的連関を明らかにする (Shaw, 1981). また,申請者の研究グループでは,観察中の運動と同じ運動を同時に行いながら運動を観察すると,ただ観察するよりも運動の弁別精度が高まることが明らかになった (畝中ら, 2014).この結果は,同時運動によって生成される遠心性コピーが運動観察力の促進に関与していることを示唆する.遠心性コピーは,運動の結果として生じる感覚の予期に関与するもので,運動遂行状況では,予期した感覚結果と実際の運動で生じた感覚結果とが比較照合され,両者にズレがある場合は運動の修正情報として利用される (Ikudomeら, 2013).よって,本年度は同時運動による遠心性コピーから生成された予期した筋運動感覚と観察による視覚情報からミラーニューロンシステムによって生成された実際の筋運動感覚との比較情報が運動の弁別に利用されていると仮説だて検証する.
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