研究課題
本研究は、運動による骨格筋肥大を決定づける分子機構の解明を目的としている。本年度は、昨年度のラットを対象とした急性実験に続いて、まずトレーニング実験(週3回、4週間)を行った。その結果、急性実験の筋タンパク質合成速度(MPS)の増加と同様、運動による筋肥大はmammalian target of rapamycin (mTOR) 阻害剤のrapamycinによって完全には抑制されなかった。この結果は、rapamycin-sensitiveなmTORシグナル経路とは独立した運動によるMPS増加と筋肥大機構が存在することを示唆する。次に、rapamycinはmTORのアロステリック阻害剤であり、mTORの作用全てを抑制するものではないことから、mTORの酵素活性を完全に抑制すると考えられるATP競合阻害剤(AZD8055)を用いて昨年度と同様の急性実験を行った。その結果、rapamycinとは異なり、AZD8055は運動によるMPSの増加を完全に抑制した。この結果は、運動によるMPSの増加はmTOR依存的であるが、rapamycin-sensitiveなmTORシグナル経路とrapamycin-insensitiveなmTORシグナル経路によって生じていることを示唆する。
3: やや遅れている
年度途中に所属が変わり、実験環境の準備にやや時間がかった。そのため、今年度に検討予定であった骨格筋におけるc-mycの役割について、プラスミドDNAの作成状況が思わしくなく、十分に検討できていない。
運動による筋肥大の分子機構について、特にrapamycin-insensitiveなmTORシグナル経路について、解析を進めていく。
大量購入によって試薬などを安価に購入できたため。
遺伝子導入実験に必要な試薬の購入に使用予定。
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Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism
巻: 40 ページ: 1137-1142
10.1139/apnm-2015-0184
http://researcher.nitech.ac.jp/html/100000423_ja.html