研究課題
本年度もmTORの機能の一部を阻害するラパマイシンに非感受性なmTORの骨格筋における機能について解析を進めた。また、レジスタンス運動の頻度、セット数、筋収縮様式といった変数による筋タンパク質代謝への影響についても検討した。本年度の主要な成果は以下の通りである。筋収縮によってeEF2のリン酸化レベルが低下し、翻訳の伸長を促していると考えられている。ラパマイシンは筋収縮によるeEF2への効果を変化させなかったが、AZD8055(mTORの全機能を阻害)は筋収縮によるeEF2のリン酸化レベルの低下を抑制した。したがって、ラパマイシン非感受性mTORは翻訳の伸張段階の調節に関与する可能性がある。従来、運動による筋タンパク質合成(MPS)の増加はラパマイシンに感受性のあるmTORの機能によって調節されていると考えられてきたため、ラパマイシンに感受性のないmTORの骨格筋タンパク質代謝調節における知見は限られていた。本研究の結果は、ラパマイシン非感受性mTORがMPSに関わること、その理由として翻訳の開始段階だけでなく伸張段階における調節にも関与しているからであることを示唆している。これらは新規の骨格筋調節メカニズムとして今後の介入ターゲットとなる可能性がある。レジスタンス運動の変数とMPS増加・筋肥大効果に関しては、①運動効果は筋収縮様式の違いではなく力積(発揮張力×時間)の影響をうける。②力積の増加に伴い運動効果は高まるものの、次第に頭打ちになる。③レジスタンス運動の実施間隔を短くする(実施頻度を多くする)とトレーニング効果が得られにくくなる。ことが分かった。現時点で詳細な分子メカニズムについては不明な点が多いものの、最適な運動処方理論の確立に向けて重要な知見が得られた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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