我が国では、健康な若年女性におけるやせすぎ者の増加という、我が国特有の現象が起きている。やせすぎは身体的、精神的に健康問題を来たし、さらには母体のやせすぎは胎児に悪影響を及ぼす。よって、このやせすぎ者の増加に歯止めをかけ、その割合を減少させる必要がある。本研究では、脳の健康という視点から若年女性のやせすぎの問題点を提示すべく、日本人若年女性のやせすぎと脳機能との関係を明らかにすることを目的としている。 本研究では、脳機能の中でも実行機能と呼ばれる高次認知機能に注目している。実行機能は「目的に応じて思考や行動を調整する能力」と幅広く定義された包括的用語である。本研究では、複数の認知課題を用い、実行機能を包括的に評価している。また、認知課題中の認知パフォーマンス(正反応率・反応時間)に加え、1/1000秒単位で認知処理過程の時間的な変化を評価できる脳波(事象関連脳電位)を計測して実行機能の処理過程を評価している。さらに、実行機能は学力と密接に関わっていることが知られているため、やせすぎとGPA(Grade Point Average)の関係にも焦点を当てている。 データの取得に時間を要し、平成28年度いっぱいまで実験を行った。現在は分析を開始した段階にある。予備分析の結果、やせすぎている学生ほどGPAが低いことが示唆されている。また、GPAと関連があることが報告されている脳波成分がBMI(体格指数)と関連していることが示されている。今後さらに分析を進め、若年女性のやせすぎと脳機能の関係を明らかにしていきたい。
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