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2014 年度 実績報告書

アジド・アルキン基を用いたVCDによる天然物・生体高分子の三次元構造解析法

研究課題

研究課題/領域番号 26702034
研究機関北海道大学

研究代表者

谷口 透  北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (00587123)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード有機化学 / 赤外円二色性 / 蛋白質 / 核酸 / 構造解析
研究実績の概要

二つのアジド基を糖、ステロイド、脂質、ペプチドなどの各種低分子天然物に導入し、VCD励起子キラリティー法が適用可能かどうかをまず検討した。糖やステロイドに導入した場合はその立体を反映した分裂型VCDシグナルがアジド伸縮振動領域(2100 cm-1)に観察され、本手法の有効性が十分に示されたと考えている。しかしながら、脂質やペプチドなど立体配座の柔軟性が高いものについては、目立ったVCDシグナルがこれまでのところ観察されていない。このことから、カルボニル基を用いる通常のVCD励起子キラリティー法同様、アジド基を用いる方法も官能基間の距離と二面角に影響されること、また同時に、コンフォメーションが柔軟な系においては本法の適用が困難であることを再確認する結果が得られた。一方で、五員環の糖に二つのアジド基を1,2-シスの位置関係で導入したところ、五員環のエンベロープ型立体配座を反映した分裂型VCDが観察されるという興味深い知見が得られた。なお、アジド基以外の官能基については、酸アジドは恐らくフェルミ共鳴の影響で2100 cm-1付近のVCDが複雑化した。また、アルキンはVCDシグナルがやや弱かった。シアノ基は今後の検討課題である。アジド基を二つ有する生体高分子の合成にも着手した。
また、既存のVCD装置を利用した場合には分裂型VCDシグナルが正負対称に出ないという問題点が観察された。本研究において、アジド領域をより精度よく観測できる新たなVCD装置を導入したので、本装置を用いて引き続き検討を行っていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初平成27年に実施を予定していた、天然物低分子・中分子の絶対立体配置決定研究をすでに手がけるとともに、種々の官能基の検討も達成した。一方、当初平成26年度に実施を予定していたVCD励起子キラリティー法の基礎理論の構築については、当方でも検討を進めているものの、他研究者から近年類似の結果がカルボニル基を用いた研究に基づいて報告されたこともあり、喫緊の研究課題ではないと判断した。生体分子が吸収を示さない領域にシグナルを示すアジド基などの官能基を用いたVCD励起子キラリティー法について、VCD励起子キラリティー法を開発した研究者として、世界に先駆けて論文報告する必要があると考えており、その第一目標に近付いている。

今後の研究の推進方策

官能基として未だ検討していないシアノ基を二つ有する化合物についてもVCD励起子キラリティー法が適用できるかどうかを確認する。一方、アジド基を二つ有する生体高分子の合成にも既に着手している。平成26年度の成果より、カルボニル基とアジド基を分子内に複数有する分子は、カルボニル基由来の分裂型VCDとアジド基由来の分裂型VCDを同時に示すことが分かっている。そこで、アジド基による局所的分子構造の抽出が生体高分子でも可能であることを実証し、本結果を基に論文をまとめることを考えている。また、他の複雑な天然物にもアジドVCD励起子キラリティー法を応用する予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初、本研究遂行に必要なVCD装置を一括で購入する予定だったが、一括の場合平成26年度において試薬類の購入や旅費の支払いが不可能となることが判明し、研究遂行に支障をきたすと判断したため、VCD装置本体を平成26年度、検出器部分を平成27年度に購入することとしたために次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

4月中に残る検出器を購入し、平成26年度に調製した各種サンプルのVCD研究を進める。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件)

  • [雑誌論文] 赤外円二色性を用いた構造解析から拓く天然物化学(仮)2015

    • 著者名/発表者名
      谷口透
    • 雑誌名

      現代化学

      巻: 531 ページ: 掲載確定

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Short Synthesis of Berkeleyamide D and Determination of the Absolute Configuration by the Vibrational Circular Dichroism Exciton Chirality Method.2014

    • 著者名/発表者名
      Kenta Komori, Tohru Taniguchi, Shoma Mizutani, Kenji Monde, Kouji Kuramochi, Kazunori Tsubaki
    • 雑誌名

      Org. Lett.

      巻: 16 ページ: 1386-1389

    • DOI

      10.1021/ol500148g

    • 査読あり
  • [雑誌論文] In Depth Study on Solution-State Structure of Poly(lactic acid) by Vibrational Circular Dichroism.2014

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Hongen, Tohru Taniguchi, Shintaro Nomura, Jun-ichi Kadokawa, Kenji Monde
    • 雑誌名

      Macromolecules

      巻: 47 ページ: 5313-5319

    • DOI

      10.1021/ma501020s

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 簡単に溶液状態の分子の立体構造を解析:赤外円二色性キラル分光法2014

    • 著者名/発表者名
      谷口透
    • 雑誌名

      現代化学

      巻: 518 ページ: 47-51

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] 赤外円二色性による立体配置・立体配座決定法の開発2015

    • 著者名/発表者名
      谷口透
    • 学会等名
      日本化学会第95回春季年会
    • 発表場所
      日本大学(千葉県船橋市)
    • 年月日
      2015-03-28
    • 招待講演
  • [学会発表] Easy Access to Molecular Stereostructure by Vibrational Circular Dichroism2014

    • 著者名/発表者名
      Tohru Taniguchi
    • 学会等名
      8th Singapore International Chemistry Conference 2014
    • 発表場所
      シンガポール国立大学(シンガポール)
    • 年月日
      2014-12-15
    • 招待講演
  • [学会発表] 赤外円二色性キラル構造解析から拓く天然物化学2014

    • 著者名/発表者名
      谷口透
    • 学会等名
      天然物ケミカルバイオロジー 第6回若手研究者ワークショップ
    • 発表場所
      千里ライフサイエンスセンター(大阪府豊中市)
    • 年月日
      2014-10-29
    • 招待講演
  • [学会発表] Seeing what other methods can not see: VCD calculation and the VCD exciton chirality method2014

    • 著者名/発表者名
      Tohru Taniguchi
    • 学会等名
      The Fourth International Conference on Vibrational Optical Activity (VOA-4)
    • 発表場所
      河北大学(中国)
    • 年月日
      2014-10-27
    • 招待講演
  • [学会発表] 赤外円二色性による天然有機化合物の三次元構造解析2014

    • 著者名/発表者名
      谷口透
    • 学会等名
      日本農芸化学会 若手の会
    • 発表場所
      定山渓ビューホテル(北海道札幌市)
    • 年月日
      2014-09-23
    • 招待講演
  • [学会発表] キラル構造解析から拓く天然物化学2014

    • 著者名/発表者名
      谷口透
    • 学会等名
      第49回天然物化学談話会
    • 発表場所
      せとうち児島ホテル(岡山県倉敷市)
    • 年月日
      2014-07-03
    • 招待講演

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公開日: 2016-06-01  

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