研究課題/領域番号 |
26702035
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 健夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90533125)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | tRNA / 修飾 / 生合成 |
研究実績の概要 |
引き続き、本申請で対象とする、高等真核生物におけるRNA転写後修飾の化学構造形成に関わる生合成遺伝子の探索を行い、特定した1つの新規遺伝子についてH27年度において論文投稿段階にある。また、関連の学会発表を行った。遺伝子探索とその成果について(1)新規のメチル化酵素を発見した(以下MTMT1と称する)。 MTMT1の遺伝子ノックアウト(KO)細胞をCRISPR/Cas9技術で作成し、5-ホルミルシチジン修飾が欠損することを見出した。KO細胞の各種解析により、ミトコンドリア機能の低下が示された。(2)探索済みの新規同定した糖転移型修飾酵素に関し、クローニングにより組み換えタンパクを取得し、in vitroでの修飾再構成に成功した。またこれまでRNAiによるノックダウンで遺伝子と修飾の関連を調べてきたが、CRISPR/Cas9技術で作成したKO細胞での解析も進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要の(1)について、推定した通りの生合成反応の第1段階にあたるメチル化酵素の特定に成功したことにより、修飾の完全欠損系の確立に成功し、細胞の性質の解析まで実施可能になった。(2)について修飾再構成を達成したことから遺伝子産物が酵素活性の実体を担うことが証明されたことになり、遺伝子欠損等の解析を、tRNA修飾異常と関連づける解析への展開が可能となる。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き探索中の遺伝子については生化学的実験による酵素活性の追跡やコンピュータを活用した候補遺伝子絞り込みの2方面から進める。遺伝子を特定したものについては、酵素としての性質を組換えタンパクやその変異体を用いて明らかにする実験、培養細胞での翻訳特性の変化や増殖能の評価などの機能解析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現段階での実験系には既存の環境を十分に活用できており、特定した遺伝子をクローニングし構築した発現系で組み換え体が比較的効率よく取得でき生化学的解析にスムーズに橋渡しできたこと、また引き続き探索中の遺伝子に関しゲノム編集によるノックアウト技術が普及し、更に詳細を現在解析中であるものの、候補の絞り込みが1つのケースで想定以上に短縮化できただろうことが挙げられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
培養細胞を扱う実験系の検討や規模の拡大を考えており、次年度使用によりそれを補っていく計画である。修飾欠損tRNAのdecoding能を評価する新たな翻訳レポーター実験系の構築を検討しており、また細胞全体の翻訳プロファイルの変動を網羅的に捉える大規模シーケンス解析のためのサンプル調製や、既に部分的に進行している表現型解明のためのノックアウトマウスの作製など、得られた知見を活用できる研究計画の立ち上げを進める。
|