研究課題/領域番号 |
26702037
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
上野 太郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主席研究員 (30648267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
近年Channelrhodopsin-2やTrpA1 channelなどを用いた神経細胞の賦活化/活動抑制により、特定の神経ネットワークの活動と行動との因果関係が明らかになってきている。ショウジョウバエを用いた研究では、そのシンプルな中枢神経系と、ゲノムワイドに作成・公開されている発現ドライバーの活用により、行動を制御する神経細胞の活動が1細胞レベルで解明されてきている。 行動を制御する神経ネットワークが明らかになる一方で、行動の発現を担う神経活動に至るまでの分子メカニズムは依然としてブラックボックスの状態である。また、上記遺伝学的ツールは強制的な神経活動を誘導しているため、生理的な影響を観察しているとは言い難く、また分子基盤が不明なままでは薬理学的介入による病態治療などにはつながりにくい。 以上の状況と課題を鑑み、本研究課題においては、遺伝学的に化合物の薬理活性を制御する新たなシステムの構築を目指す。様々な生理活性作用を持つ化合物に、特定の酵素によって処理される修飾を付加させ、遺伝学的に酵素の発現を誘導することで細胞特異的に細胞機能を制御する。 これまでに、ショウジョウバエにおいてトランスジェニックラインを作出し、リアノジン受容体作動薬である4-chloro-m-cresolに修飾を加えた化合物を投与することにより、細胞特異的に細胞内カルシウムを増加させられることを確認した。さらに、哺乳類において本システムを実装するために、AAVによる遺伝子導入を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞機能制御を目的としたケミカルバイオロジーの系はショウジョウバエのトランスジェニックラインを作出している。 本システムで用いる修飾化合物については、協力研究者である化学者による合成を進めている。修飾化合物は酵素との反応性が化合物の種類によって異なることが認められ、複数種類の化合物を試すことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本システムを哺乳類においても実装するために、AAVを用いて目的遺伝子をマウス及びマーモセットの脳組織で発現させる。これにより、単一の個体で投与する化合物の種類を変更することで、細胞機能を多方向に制御し、行動との関係性を調べることが可能になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度から独立して研究室を運営することが決まり、研究室の立ち上げのための事務仕事が増え、予定していたほど実験が実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者が平成28年度から大学で独立して研究室を運営するため、本研究課題を実施するために必要な実験機器の購入を行う。
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