研究課題/領域番号 |
26702038
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
王 丹 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (50615482)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | in vivo / RNA / foci dynamics / transcription |
研究実績の概要 |
本研究は神経回路に局在するmRNAの転写後制御による神経回路形成・可塑性メカニズムを解明することを目的としている。そのために、mRNAターゲット依存的発光ができる蛍光イメージング法およびその応用を基盤技術として開発している。 H26年度は、1. 内在性RNA追跡する分子量が小さい、s/n比が高い、発光のタイムラグがほとんどない、定量的計測可能な新規蛍光プローブの開発; 2. 生体脳でのRNA蛍光ライブイメージング法の最適化および定量化、の2点において研究を進めた。 その結果、1. 蛍光小分子とRNA aptamerを組み合わせた新規内在性RNAイメージングの共同開発 に成功した(Sato et al., Angew Chem Int Ed Engl. 2;54(6): 1855-8. 2015)。新規開発したRNAイメージング法は生細胞内でRNAアプタマーが持続的に供給できる点や細胞膜を透過できる蛍光小分子を利用した点において、これまでに開発されたイメージング法と違い新しいコンセプトのものである。 2. 生体脳でのRNAイメージング法に関しては、生きたマウスの小脳顆粒細胞における28S rRNAおよびU3 snoRNAの検出を試みた。いずれのRNAも発現量が高く、特異的な核内局在パターンを示すので、特異的に検出された結果が得られている。さらに転写阻害剤や抗がん剤処理による28S rRNAの核内アセンブリーのダイナミクスを検証し定量的に評価した結果、細胞株とナイーブな組織内との間で、28S rRNAの制御経路およびRNA fociダイナミクスが異なるデータが得られている。このような結果は生体内におけるRNAイメージングの重要性を示唆している(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験計画が概ね順調に進展している理由としては、発現量が高いRNAターゲットについて、生体内での検出特異性が検証できたことと、in vivo実験に応用できるRNAイメージングツールとしての有用性を証明する結果が得られたことが挙げられる。しかし、残る課題として、発現量が低いターゲットの検出や、神経回路形成におけるin vivoイメージングシステムの構築が存在する。
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今後の研究の推進方策 |
今後、研究計画通り、海馬神経分散培養回路において可塑性に関わる神経活動などを誘導し、RNA dynamicsを樹状突起内で観察・測定する実験を推進する。
神経活動変化を、今まで確立されてきた電場刺激、ケミカル-LTD, LTP、High K+、TTX、AP5、Picrotoxin など再現性の高い神経活動操作法で誘導、プローブは電気穿孔法やインジェクションで導入し、神経活動の変化に応じるRNA dynamicsを測定する。また、ストレス誘導および解除に伴うRNA dynamicsを樹状突起内で観察・測定する。Arsenite, Glucocorticoids, Amyloid beta-peptideおよびMalon-diadehydeなどをストレス刺激に用いる。
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