研究課題
今年度(最終年度)は、これまでの現地調査で収集した資料やインタビュー調査で得た知見を整理しつつ、人々の「生存」と密接な係わりを持つ海生哺乳動物(特にクジラ)をめぐる域内政治=対内的自治への展開と、国際政治=対外的自治への展開の相関について調査することで、本プロジェクトの目的=自治と気候変動の相関に迫ることとした。特に、これまでの調査で得た知見は、複数の元/現役フルタイム・ハンターから得られたオーラル・ヒストリーに基づくものであり、こうした「声」を域内政治と国際政治の相関という文脈にどう取り込んでいくかに焦点を当てることを試みた。調査は、昨年度の調査地、ヌーク、アーシア―トと同時に、初年度の調査地であったタスイサック、カシアスックにて行った。注目したのは、グリーンランド域内での政策決定の際にハンターの利益を代弁する狩猟・漁労協会(KNAPK)の役割であり、それが域内政治、延いては国際政治の場でグリーンランドが行使する影響力にいかなる要素を提供しているか、であった。KNAPKはヌークに本部を置くが、グリーンランド全域に70を超える支部(KNAPP)を有し、約2400人のメンバー(主にフルタイム・ハンター)によって構成され、会費によって運営されている(売り上げの1.5%をKNAPKが徴収する)。選挙などで果たす役割は大きく、その政治的影響力に対して、政府も無視できない存在となっている。KNAPKの声は、人間と自然環境(気候変動)との係わりに対して独自の論理を持つハンターの声によって形成されており、例えば国際捕鯨委員会(IWC)といった外交交渉の場で、本国デンマークと同等の立場で自分たちの声=対外的自治を発現させていく時の「根拠」にもなっている。本プロジェクトの成果は、気候変動をめぐる各主体間の解釈の相違(人間=環境関係をどう捉えるか)をテーマにした書籍として出版を予定している。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Working paper for Arctic Politics Research Seminars 2017
巻: - ページ: 1-10
巻: - ページ: 1-28
www.en.cgs.aau.dk/news/news-show/visiting-arctic-scholar--minori-takahashi.cid342094