9月にインドに渡航し、これまでに得たデータに対して補足的な調査を行った。研究成果として、これまで継続的に行ってきた研究対象村1村のパネルデータから、水汲みをする役割にある女性の社会ネットワークが、水源選択に及ぼす影響を分析した。この結果、紐帯で繋がる村における中心的な人物の水源選択がその個人の水源選択に有意に影響を与えており、本事例では通常リスク認知に対して影響があるとされる教育レベルや経済状況といった個人属性は有意ではなかった。この結果は、海外ジャーナルに査読付き論文として掲載されている。 さらに、インドのウエスト・ベンガル州については、研究対象村4村654世帯のデータに対して、地域コミュニティごとの特性が飲料水の水源選択に及ぼす影響を分析するため、マルチレベル分析を適用し、コミュニティという単位が安全な水源選択に何らかの影響を及ぼしていること、属しているコミュニティにsecondary school以上の教育を受けている人が多いほど個人の安全な水源を選択する確率が高まること、属するコミュニティにヒンズー教の世帯が多いほど個人の安全な水源を選択する確率が低まることが明らかとなった。この成果は、国際学会AS2018で口頭発表の予定である。 バングラデシュでの調査は危機管理上、難航したが、2月にNawabganjでの調査を実施することができ、今後早急にデータを取りまとめて分析を行う。また、開発援助に対する示唆を得るために、ヒ素汚染の問題に対する歩みを検証するという目的で、インドのウエスト・ベンガル州とバングラデシュでヒ素が初めて発見された村での調査を実施してきた。さらに文化的背景の異なるネパール・ラオスでの現況も視察した。これらの調査結果をもとに、ヒ素汚染が未だに一部の農村部住民に対して深刻な問題であり続ける状況について、社会制度的な観点から分析を行う予定である。
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