本研究で開発した"Emotion Graph"は、移動時のリアルタイムの感覚をスマートフォンのボタン一つで動画とともに記録し、感覚変化のグラフと変化地点をプロットしたマップを自動的に作成するツールである。入力装置については、アプリケーションをApple Storeからダウンロードし、記録開始とともに前方の景色の動画が撮影される。また、位置情報システムと連動させ、ボタンを押した位置が地図にマッピングされる仕組みになっている。Web画面上(https://emo-gra.net/login(2017年5月現在))では、記録時の高揚感のアップダウンのデータから折線グラフが作成され、変化の大きい各点をクリックすると記録写真やスタートからの距離などが表示される。 本年度は、収集された景観資源やそれを他ユーザに解説するコメント等のWebデータ、利用者へのアンケート結果を分析した。景観資源としては、神社や公園、利用者が日頃散歩している森林内のフットパス等の、観光地ではない名もない場所の記録が多かった。一枚の写真としてはインパクトのないスポットでも、スタートからゴールまでを移動する体験として楽しい場所である歩行経路が多く、穴場的な観光スポットとしておすすめである等のコメントと共に、比較的、自宅近所の馴染みのある場所が撮影されていた。また、Webサイト登録者の8%が、他人が記録した撮影箇所に実際に訪れたことが分かった。 開発費用の不足により、当初予定していたWebサイトとSNSサイトを連動させ、利用者間のコミュニケーションを別の機能として独立させることはできなかった。また、Webサイトのデータ表示に時間がかかり、スムーズな操作性が得られない課題が残されている。今後は、これらの点の改善を重ねる予定である。
|