研究実績の概要 |
本研究課題では、1. 文献研究および2. フィールド研究により、ブータン仏教の歴史・思想・現状を総合的に解明した(基礎研究)。その上で、3. 学際研究により、ブータン仏教の社会への応用性についても検討した(応用研究)。 【1.文献研究(歴史・思想)】ブータン仏教のうち“ドゥク派”と“ニンマ派”という2大宗派の歴史についてはすでに多くの研究がなされてきた。一方で、その思想については多くの部分が未解明である。とりわけ、ドゥク派の開祖ツァンパ・ギャレー(1161-1211)については、テキストへのアクセスが長らく困難であったこともあり、その思想の大部分が未解明のままである。4年次(平成29年度)には、ツァンパ・ギャレーの伝記入手可能な7種類の伝記の写本を全て入手し、批判的校訂作業を進めるとともに、試訳の叩き台を完成させた(但し修正すべき箇所は多く残っている)。同時に内容分析を進め、伝記研究の成果を論文を通じて発表した。 【2.フィールド研究】4年次(平成29年度)には、サキャ派やゲルク派など、ブータン仏教の少数宗派の現状について行った予備調査のデータを再整理した。 【3.学際研究】ブータンの国民総幸福(GNH)政策は世界的に有名であるが、同政策についてはこれまで主として開発学や経済学的視点から研究が進められてきた。本研究課題では、同政策の基底にみられる仏教思想について検証を行い、文化・社会に見られる仏教思想の応用性を検証し、国際ワークショップにて発表を行った。 研究成果については、英文単編著Buddhism, Culture and Society in Bhutan (Kathmandu: Vajra Publications, 2018)ならびに和文単編著『ブータン:幸せをめざす王国』(創元社, 2017)、および複数の学術論文、学会発表、HP等を通じて公表した。
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