研究課題/領域番号 |
26704004
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
江畑 冬生 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80709874)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チュルク諸語 / サハ語 / トゥバ語 / 現地調査 / 補助動詞 / 派生 / ボイス接辞 / 逆使役 |
研究実績の概要 |
本年度には,チュルク諸語北東グループに属する2つの言語(サハ語とトゥバ語)の文法構造の相違点を対照することを中心とする研究を行った.現地調査によるフィールドデータおよび文献資料の分析を行った結果として,北東グループ諸言語の中でサハ語のみが有する特異性が明らかになるとともに,他の諸言語とは異なる特徴を有するに至った歴史的変遷の一端が明らかになりつつある.具体的には以下の研究成果が得られた. 1. 2015年8月にトゥバ共和国クズル市およびサハ共和国ヤクーツク市において,トゥバ語およびサハ語の現地調査を行い,両言語の補助動詞やボイス接辞の用法の異同に関する言語データを得た.同時に,現地出版物の収集を行った. 2. 現地調査の成果に基づき,海外での学会発表としてサハ語の文末接語に関する論考およびサハ語において「双数」とされるカテゴリの再解釈に関する論考を発表した.国内の学会では,サハ語の再帰接辞に関する形態音韻的・形態統語的な振る舞いを根拠に,一部の用法を逆使役接辞とする新たな解釈を発表1回した. 3. 本年度に刊行された論文3編では,次のことについて論じた: [1]サハ語では一部に「被修飾語-修飾語」語順が見られる.この特異的な語順は近隣のツングース諸語に見られるものと一見類似するが,言語接触の結果とは言えない.[2]従来サハ語において受身接辞および再帰接辞とされたボイス接辞を,その形態音韻的・形態統語的な振る舞いから,受身接辞・逆使役接辞・再帰接辞の3つの形態素として分析すべきである.[3]サハ語では引用命令において対格名詞句が現れることがある.この対格名詞句の出現は,古代チュルク語および現代のトゥバ語の特徴とは大きく異なっている. 4. アウトリーチ活動の一環として,啓蒙的学術図書(共著)が刊行された.また新潟大学において「シベリアの民族・言語・文化」と題する講演会を開催した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 研究課題の当初計画に基づき,チュルク諸語北東グループに属する2つの言語(トゥバ語およびサハ語)の現地調査を行った. 2. 研究成果として,国内学会での研究発表1回,国際学会での研究発表2回を行った.また学術雑誌に論文3編が掲載された(うち2編は査読有り).さらに共著による啓蒙的学術図書(共著)を出版した. 3. アウトリーチ活動の一環として,新潟大学において「シベリアの民族・言語・文化」と題する講演会を開催した. 4. 2016年7月に新潟大学において北東ユーラシア諸言語の記述と対照に関する国際ワークショップを開催予定であり,その準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる28年度においても,基本的には当初計画に基づいて研究課題を遂行していく.ただし現地調査については,現地情勢やフライトスケジュールの急な変更なども見据えながら柔軟に対応し,場合によっては日程や訪問都市を変更する.
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次年度使用額が生じた理由 |
1. 国内出張および海外出張の航空運賃が,想定よりも安価になったため. 2. 出張経費の一部を学内予算との合算で支出することが可能であったため.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年7月に新潟大学において国際ワークショップを開催する予定である.海外からの研究者を招聘するための予算として使用する予定である.
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