研究課題/領域番号 |
26704005
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
坊農 真弓 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 准教授 (50418521)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 手話相互行為 / 手話会話 / アノテーション / コーパス / 日本手話 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的を達成するために,以下の手順で研究を進める予定であった.. (1)開発中の手話言語記述手法に基づいたデータのアノテーション作業,(2)(1)の手法の利点を明確に示すための手話会話データ収録,(3)手話会話を用いたデータセッション(会話分析研究で頻繁になされるスタイルのもの),(4)CLおよびCL表現,ロールシフト,ダブリングに重点を置いたデータ分析,(5)手話会話分析の領域立ち上げのための国際ワークショップの開催,(6)理論手話言語学の人らとの勉強会,(7)国際ジャーナルへの投稿. 平成26年度は,主として(1)(2)(3)を進めた.(1)は,手話を日常言語とするろうの技術補佐員とCODA(Children of Deaf Adults)に作業依頼し,順調に作業が進められた.作業上不明な点については,週に1回チームミーティングを開催し,データアノテーションの定義と作業ルールを定めた.(2)は分担者になっている別の科研費基盤研究(B)プロジェクトと合同で福岡県と群馬県のデータを収録した.(3)も週に1回チームでデータセッションを開催し,データ分析上の問題点をクリアにした. (4)については,当初予定していたCLおよびCL表現,ロールシフト,ダブリングではなく,マウジングの減少に焦点を当てることにした.(5)については,自ら国際ワークショップを企画しなかったものの,3月30日31日にイギリスで開かれた国際ワークショップに招待され,国際的な場面で関連研究者と議論を交わした.(7)についてはJournal of Pragmaticsに投稿する予定で現在準備を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述したように平成26年度の終盤には,手話コーパス言語学および手話アノテーション関係の国際ワークショップに招かれて,世界19カ国の手話コーパスの一つとして我々が収録した手話会話データとアノテーション手法を紹介することができた(http://www.bslcorpusproject.org/events/digging-workshop/).これは,非常に意義深いことであり,我々が進めてきた手話相互行為分析のための言語記述手法のオリジナリティが世界的に明らかになった.また,2年に一度開催される国際会議Theoretical Issues in Sign Language Research (TISLR)(http://www.tislr12.org)に採択されたことも大きい(倍率20%弱).この調子で成果を積んでいきたいと考えている.以上のことから,本プロジェクトは当初の計画以上に進展していると評価している.
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今後の研究の推進方策 |
国際ワークショップに参加することにより,我々の研究成果を国際ジャーナルに掲載することの重要性と緊急性を再認識した.今後は,手話を生活言語とするろう者のアノテーター,熟練した手話通訳者としての活動経験のあるアノテーター,手話だけではなく非言語情報の記述経験が豊富なアノテーターの協力を受けて,我々が提案しているアノテーション手法をデータ(手話コーパス)に適用していただく.さらにアノテーションマニュアルを日本語と英語版で用意し,ホームページに公開するなど,学会発表や論文発表にとどまらない研究成果の報告を試みる予定である.この試みを積み重ねることにより,アノテーションデータが蓄積され,定量分析を用いた研究論文の執筆を進めるつもりである.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月30日および31日に参加した国際会議の旅費を概算としていたため,年度末に未使用金が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
本未使用金については,本プロジェクトを進めるで最も重要なアノテーターに対する謝金として使用する予定である.
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