研究課題
本年度はまず、バングラデシュ・アジア協会刊行の『バングラデシュ史:地域的観点によるベンガル初期史』第2巻の一部を構成するものとして、「社会生活:ヴァルナ・ジャーティ体制の諸問題」を公表した。そこでは、北インド辺境に位置し、ブラフマニズムの影響が及ぶのが比較的遅かったベンガルにおいて、5世紀には成立していた自作農を中心とする比較的階層差の少ない農村社会から、6世紀以降の土地保有有力者層の台頭、8世紀以降の地域王権の確立とその下での従属支配者層の成長へと、土地関係重層化と社会の階層化が進展する中で、8世紀から12世紀にかけて様々な社会集団の原ジャーティ的職能集団としての組織化とネットワーク形成が進み、13世紀に至り、それらのジャーティ秩序としての体系化が宮廷・在地での権威を確立しつつあったブラーフマナらにより図られる過程を論じた。インドでの現地調査では、まずアッサム州南東部にて、15世紀から18世紀にかけて丘陵部から平野部に首都を移しつつ国家形成を果たしたディマサ王国の遺跡および碑文の調査・記録を行い、丘陵部の部族首長が、ベンガル側から移住してきたブラーフマナらの媒介によるブラフマニズム受容を通して王権として確立し、それに伴い他の部族構成員と差別化された有力者がクシャトリヤを自称する土地保有武人層を形成していく過程を跡付けた。また、コルカタのインド博物館にて5世紀の銅板文書を調査・撮影するとともに、アジア協会にて未取得の所蔵銅板文書のデジタル写真を収集した。以上に加え、デリーでの編集者との会合などを通して、著書の出版準備を進めた。
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A. M. Chowdhury and R. Chakravarti (eds), History of Bangladesh: Early Bengal in Regional Perspectives (up to c. 1200 CE), Vol.2 Society Economy Culture, Dhaka: Asiatic Society of Bangladesh
巻: - ページ: 43-70
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