研究課題/領域番号 |
26704011
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山本 睦 山形大学, 人文学部, 助教 (50648657)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 文化人類学 / アンデス先史学 / 形成期 / 複雑社会 / 神殿 / 地域間交流 |
研究実績の概要 |
本研究は、複雑社会が成立・展開したアンデス文明形成期(紀元前3000年-紀元前後)において、社会的統合かつ交流の場であったとされる神殿をめぐる諸活動と地域間交流との動態的相互関係を、考古学的手法を用いて実証的に研究するものである。そのため、これまでに調査を継続的に実施してきた、ペルー北部のワンカバンバ川流域で複数の神殿遺跡を発掘し、同時に同流域周辺地域の遺跡踏査をおこなう。そして、獲得した考古資料の分析と、GIS(地理情報システム)によるルート解析を総合することで、上記の問題に取り組む。 平成26年度は、まず、ワンカバンバ川流域で最大規模を誇る神殿遺跡インガタンボにて、2011年におこなった発掘出土資料の分析を、専門家に依頼した。その結果、これまで把握していた以上に、様々な種の動物が同遺跡で利用されていたことが明らかとなった。これには、地域間交流に際して荷駄獣とされるラクダ科動物も含まれている。また、今回分析した出土資料は、神殿の改築時に埋められたものであることがわかっているため、この結果によって、神殿における儀礼活動と地域間交流の関係を議論する下地を築くことができた点は、今後の研究展開を考えるうえで非常に意義深い。 次に、ワンカバンバ川流域の南側に広がるインカワシ市とクテルボ市で、広域的な遺跡踏査をおこなった。その結果、既知の諸遺跡を確認するだけでなく、ペルー文化省に未登録の神殿遺跡や岩絵遺跡などを複数記録した。また、ラクダ科動物を現在飼育中の地域も新たに確認できたなど、ペルー北部の海岸部、山間部、熱帯低地を結ぶ地域間交流ルートに関する新たな知見をえたことは、極めて大きな成果である。 これらのデータの統合については課題として残るが、今後はGISを用いた整理・分析作業を進めていく予定である。 なお、平成26年度の成果に関しては、国内の学会で発表し、高い評価を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、当初の予定通り、発掘出土資料の分析と遺跡踏査を順調に実施し、予想以上の成果をあげることができた。 また、それらのデータと数値地図、および3次元地形データをふまえて、GISによる解析を進めており、ペルー北部の地域間交流ルートに関するデータの整理と分析については、現在も継続的に実施中である。 こうしたことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、ワンカバンバ川流域で発掘調査を予定しているが、その調査申請は着実に進んでおり、共同調査者や参加メンバー、動植物依存体の種同定や放射性炭素年代測定をおこなう専門家との、今後の調査・分析方針をめぐる協議も済んでいる。 また今後は、7月の国際アメリカニスト会議(サン・サルバドル)といった国内外の学術誌や学会などで、研究成果を発表することを計画しており、様々な研究者との意見交換を通じて、本研究の精緻化に努め、今後の研究の促進を図っていく予定である。
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