研究課題/領域番号 |
26705002
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
早川 和伸 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (40458948)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | FTA / RTA / 輸出価格 / タイ |
研究実績の概要 |
本研究では、輸出時に自由貿易協定(FTA)税率を利用することによる輸出価格上昇効果を、二つのアプローチを用いて分析する。第一のアプローチでは、タイの企業レベル・税関データを用いて、輸入時にFTA特恵税率を利用し始めることで、当該企業の輸入単価がどのように変化しているかを調べる。第二のアプローチでは、世界大の関税番号レベルの貿易データを用いて、特恵対象になることで、輸出単価がどのように変化しているかを調べる。このように、第一のアプローチでは、タイのケースに分析を限定する代わりに、厳密な分析を行っている。一方で、第二のアプローチでは、実際に特恵スキームが利用されているかどうかは識別できないものの、世界中の国を対象に分析を行っている。平成26年度では、両データの入手、及び分析用のデータベースを構築した。そして、簡単な分析を行い、第一稿をそれぞれ作成した。第一のアプローチによる分析では、特恵スキームを用いることに伴い、輸入価格が平均的に3%程度、上昇していることが分かった。また、第二のアプローチによる分析では、最恵国待遇税率の低下よりも、特恵対象になることによる輸出価格上昇効果のほうが大きいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、第一のアプローチに必要なデータを企業サーベイを実施することによって、入手する予定であった。しかしながら、タイの研究協力者を通じて、タイの税関における個票データを入手することができ、サーベイを実施する必要がなくなったばかりか、全てのタイの貿易を対象にできるようになった。また、第二のアプローチに必要なデータを、Global Trade Information Services社のデータベースから、一国ずつ地道にダウンロードすることによって入手する予定であったが、本務先のライブラリアンの尽力により、Global Trade Information Services社から元のデータを一括して入手することができた。これにより、データ収集にかかる時間が大幅に短縮され、結果として、プロジェクト1年目に第一稿を書き上げられる段階まで進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に作成した第一稿を、国内外の学会、ワークショップにて研究報告を行い、論文の加筆・修正を行う。また、タイの税関データを用いた分析では、企業の生産情報を含んだ工業センサスの接続を検討する。これが可能になると、輸出価格上昇効果に対して影響を与える、輸入企業特性を明らかにすることができる。最後に、論文横断的に分析結果を整理し、それを平易な言葉で紹介したポリシー・ブリーフを作成し、多様な成果普及を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成度」のところで述べたように、当初の計画では、企業サーベイの実施、及び多くのアルバイトを雇用してのデータ・ダウンロードを行う予定であったが、タイの税関個票データを入手したこと、及びGlobal Trade Information Services社から元データを一括して入手することができたため、当初よりも費用を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
タイの税関個票データを入手したことで、企業サーベイをすることなく、企業の輸入状況に関するデータを入手できたが、あくまでこれは税関データであるため、企業の生産情報を含まない。そのため、生産情報を工業センサスから入手し、これと税関データを接続する必要がある。平成27年度では、「次年度使用額」を用いて、この作業を行う。
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