今年度の主な研究業績は以下である。1.二変数効用関数を用いて、非金融的な変数に対するリスクがポートフォリオを含む典型的な意思決定問題に与える影響を分析した。より具体的には、非金融的な変数がない場合によりリスク回避的な意思決定をする場合、それにリスクを導入した場合にリスク回避的な意思決定が保存する条件を導出した。本研究課題の主題である社会選好は二変数効用関数の特別な場合であると考えられるので、本研究はそれを含むより一般的な分析において研究目的を達成したと言える。研究会などで報告を行って、来年度以降に国際学会での報告を行って、最終的には国際学術誌の刊行を目指す。2.独裁者ゲームにリスクを導入することで、社会イメージの影響を計測した経済実験を行った。この研究は昨年度から引き続き行っており、今年度はいくつかの研究会で報告を行い、そのコメントを参考にして改訂作業を進めている段階である。来年度に国際学術誌への刊行を目指して、投稿する予定である。本研究課題は理論的には二変数効用関数を用いた分析である。今年度は二変数効用関数で表現できる後悔理論を用いて、後悔が医療意思決定に与える影響を確かめる分析を行った。この論文が Health Economic Review 誌から刊行された。また、複数の疾患間に依存性のある場合に、それが医療行為の価値に与える影響を分析する研究も行った。効用が消費水準と健康状態で決まる二変数効用関数の分析である。この研究は2019年4月15日に Journal of Health Economics 誌に採択された。その他に、リスクと曖昧性が同時に存在する場合の投資問題に関する分析を行って、Annals of Operations Research 誌に採択された。
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