オペライズモにおける社会調査の方法論的固有性の解明を目的とする本研究では、初年度にオペライズモ前史の系譜をたしかめた上で第二年度には戦後思想史上 マルクスの労働者調査が再発見された契機をひもとき、第三年度にはフォローアップ調査にもとづいて今日的な文脈におけるオペライズモ研究の世界的な位置を確かめてきた。四年度目には諸般の事情から研究計画の延長をよぎなくされたが、たゆまず研究報告と資料整理をすすめる。五年目となる最終年度には、当初の研究目的に照らして研究計画を見直し、研究成果のとりまとめにむけて研究会を重ねてきた。 具体的には、研究史上重要な一次資料を精力的に刊行する Derive/Approdi 社の編集に携わる Gigi Roggero が繰り返し Danilo Montaldi 以来の系譜をたどるように、調査方法論において階級的敵対性のただなかに身を置くところにある固有性の、社会調査史における正当な評価を試みたのである。たとえば似て非なるアプローチにグラウンデッドセオリーがあるが、あくまで理論化の主体は研究者の方と前提されており、看護学の現場において患者の方が理論を形成するものと決してみなされることはない。これに対してオペライズモの共同調査 con-ricerca においては労働者の知性の実在を、方法論的な前提としてきた。これを理念の次元に留めない調査実践のためには、容易に理解されるように現実の限界と数多の課題が生じうるが、少なくとも方法的態度の点において、ここに揺るがない固有性を見いだすことができた。
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