研究課題
1 分析方法の提案コンピュータを用いた内容分析について、本年度は先行する研究を収集・検討することに主眼を置いた。主として英語圏のテキストマイニングや内容分析に関する文献に加えて、実際の分析に用いられているソフトウェアについても収集・検討した。内容分析ソフトウェア「Word Stat 7」、質的データ分析ソフトウェア「Atlas.ti 7」「Nvivo 10」、コーパス分析ソフトウェア「WordSmith 6」、さらに統計ソフトウェア「JMP 11」を調達し、これらのソフトウェアを用いて試験的な分析を行なった。これらのソフトゥエアの比較を行ないつつ、独自ソフトウェアに追加することが望ましいような分析の手法や機能について検討を行なった。2 分析用ソフトウェアの開発上記の検討を踏まえた上で、今年度は独自の分析ソフトウェア開発に関しては、機能の設計や内部仕様の策定を中心に行なった。なお、いくつかの機能については今年度中に追加することができた。(1)言語学分野における分析の方法に学び、当該分野で多く用いられている統計指標を取り入れた。具体的には、特定の単語Aと一緒に使われる(共起する)ことが多い語をリストアップする機能で、共起の程度をあらわす指標として「Mutual Information」「T Score」「Log Likelihood」などを使用できるようにした。(2)ユーザーによる機能の追加やカスタマイズを行ないやすい仕組みを準備し、使用方法を書籍にまとめた。また(3)英語版マニュアルの作成を進めた。3 応用に適したデータと研究領域の探索本研究で開発する方法・ソフトウェアが、どのようなデータや研究領域に特に適しているのかを確認するために、みずからこの方法を用いて応用研究に取り組んだ。今年度は自由回答データの分析を含む研究を行ない、共同で学会発表を行なった。
2: おおむね順調に進展している
多くの既存ソフトウェアのレビューを進め、その結果を参考に、すでに一部の分析機能を独自分析ソフトウェアに追加することができた。独自分析ソフトウェアは、開発途上の版をフリーソフトウェアとしてすでにWebで公開しており、月間ダウンロード数は2,000から3,000程度である。また本ソフトウェアに関する講演を、社会調査協会主催の研究会、英語コーパス学会東支部ワークショップなどで行なった。そして本ソフトウェアを利用した応用研究(学会発表・論文)は、筆者が把握している限りでも900件以上が発表されている。また筆者自身がこの方法・ソフトウェアを用いて行なった共同研究によって、第65回関西社会学会大会奨励賞を受賞した。これらの点から、本研究はおおむね順調に進展していると見なせるだろう。
本研究はこれまでのところ、上述のようにおおむね順調に進展しており、今後も当初計画に沿って研究を進めていく予定である。翌年度(平成27年度)は科学研究費補助金によって、プログラミングおよび大容量データ分析に適した強力な計算機の調達、研究利用が許諾された新聞記事データの調達、独自ソフトウェアの英語マニュアル作成のための翻訳などを実施することで、研究を進める助けとする予定である。
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立命館産業社会論集
巻: 50(3) ページ: 1-20
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