研究課題/領域番号 |
26705007
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
贄川 信幸 日本社会事業大学, 付置研究所, 准教授 (30536181)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 精神保健福祉 / リカバリー / プログラム評価 |
研究実績の概要 |
2014年度はまず,代表的なリカバリー志向の支援プログラムと考えられる,家族心理教育および包括型地域生活支援(Assertive Community Treatment: ACT)プログラムに従事する実践家およびエキスパートを対象とした参与観察およびヒアリングにより,精神障害をもつ人たちに対するリカバリー志向の支援を推進するために必要な要素を検討した。 家族心理教育においては,家族心理教育の初級者を主対象とした2日間の研修プログラムの準備段階から研修当日,およびその振返りの場に参与観察し,講師との意見交換も踏まえて,リカバリー志向支援の要素がどのように扱われるのかを中心に考察した。ACTにおいては,日本へのACT導入時から実践に関与しているエキスパートにヒアリングを行い,リカバリー志向の支援態度が形成された背景や支援理念に葛藤が生じる際の思考を中心に考察した。 家族心理教育の研修講師は,研修会の実施自体あるいは家族心理教育の構成要素である情報提供や対処スキルの獲得に焦点が当てられているものの,リカバリーの理念に明示的に焦点は当てられていなかった。ACTのエキスパートからは,リカバリーの理念そのものではなく,サービス利用者の両価的な感情や思考,希望に対して弁証的に関わる必要性,支援者が葛藤を抱えた際に支援者間でも弁証的に関わる必要性が,結果としてリカバリー志向の支援態度に関連しうることが指摘された。また,リカバリー志向の支援においては支援者の人に対する興味・関心の質が影響しうることが指摘された。 これらの知見から,弁証的なアプローチおよびクライエントへの関心に関して資料検討を含む精査の必要性が生じた。現在は資料検討を行いつつ引き続きヒアリングを継続し,当初予定していた大規模な実態調査を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リカバリー志向の支援に関するエキスパートに対するヒヤリングにおいて,弁証的アプローチの視点の必要性が示唆された。このアプローチに関して詳細な資料分析が必要となったため,予定していた実態把握調査の実施を延期した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に,未実施であった実態把握調査を行う。その結果を早急に分析し,予定していたモデル案の構築に着手する。その際,ヒヤリングの協力を得たエキスパートにも助言を求め,モデル案の構築が円滑に進むよう務める。
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次年度使用額が生じた理由 |
参与観察およびエキスパートへのヒヤリングを行う中で,リカバリー志向の支援に関する視点を検討するためには,弁証的なアプローチや支援者のより根本の支援観を扱う必要があることが示唆された。そこで,これらの事項を踏まえた文献調査及び再ヒヤリングを行宇こととした《現在進行中)。これに伴い,予定していた大規模な実態調査の実施を延期したため,当該調査にて執行予定の研究費が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額に計上した研究費は,実施を延期していた大規模実態把握調査にて執行予定である。それを除く平成27年度請求の研究費は,当初の予定通り,実態調査の結果を踏まえて研修等の介入方略案を開発し,試行介入及びその効果評価・分析にて執行予定である。
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