本研究では平成29年度に,精神保健医療福祉サービスにおいてリカバリー志向支援を推進するための方略を検討するために,その基礎となる支援者の認識,および組織的要因を分析するために,まず,リカバリーを重要概念とする,精神障害をもつ人の家族に対する心理教育プログラム(家族心理教育)の実施スタッフの自主勉強会への参与観察を行った。 A市とその近隣市の精神科医療機関および地域事業所の有志の支援専門職が中心となって定期的に開催する心理教育に関する勉強会では,構造化された家族心理教育の内容解釈とそれを他の支援専門職へ伝える事項において,家族支援の必要性背景に触れることが中心であり,必ずしもリカバリーの観点で扱われることはなかった。家族支援の必要性背景と,その後強調されるようになったリカバリーの概念が,必ずしも同一の枠組みで捉えられていない可能性が示唆された。一方で,有志のメンバーが中心であった勉強会から,それぞれが所属する機関や近隣機関に広報活動を行いながら,家族支援,家族心理教育の理念や技法を伝え,共有する機会へと活動を展開していた。参加した専門職に家族支援,家族心理教育の意義や重要概念が共有される機会となっていることが示唆された。 次に,全国の精神科医療機関の支援専門職および,自立訓練(生活訓練)事業所の職員を対象に,リカバリー志向の支援に関する認識および組織的な事項を問う自記式調査を行った。この結果,支援職のリカバリーに関する概念および組織環境に対する認識が明らかとなり,支援方略検討の示唆を得た。
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