研究課題/領域番号 |
26705010
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
坪見 博之 富山大学, 人文学部, 准教授 (70447986)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 実験系心理学 / 知覚 / 記憶 / 意識 |
研究実績の概要 |
視覚において、「目の前に存在する物体」の表象と「消え去った物体」の保持は、それぞれ知覚と記憶という異なる処理段階として、従来独立に扱われてきた。しかし、研究代表者はこれまでの研究において、この二つは容量制約とそれを引き起こす脳機序の両面において非常に類似性が高いことを見いだした(Tsubomi et al., 2013, J. Neurosci)。本研究課題ではこの成果を発展させ、今年度は、不必要になった知覚や記憶が消去される脳過程を検討した。昨年度に購入しセットアップを完了した脳波計を用いて検討した所、一度ワーキングメモリに記憶した情報が不必要になったとき、意図的にすべてを消去することは可能であるが、一部のみを消去することは非常に困難であることが明らかになった。また、半球が異なる場合には一部を消去することが可能になるのではないかという仮説(例えば左視野(右半球)の記憶表象だけを消去する)も検討したが、部分的に消去することは困難であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、知覚と記憶の容量制約の類似性について3つのテーマを設けて研究を進めているが(1・ワーキングメモリからの情報の消去、2・知覚とワーキングメモリの容量の同一性、3・ワーキングメモリとマスキングの関連)、今年度はそのうちの1つのテーマ(1・ワーキングメモリからの情報の消去)について集中的に実験を進め、約200名の実験参加者から行動実験と脳波実験のデータを集めることができた。また、研究補助員を雇用することで安定的に実験を進められる環境も整ったことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
3テーマのうちの1つであるワーキングメモリからの不要情報の消去については、概ね予測に従ったデータが得られつつあり、いくつかの補強実験を進めて論文投稿への道筋を見つけたい。次年度も引き続きデータ収集を行う予定である。また、残り2つのテーマ(2・知覚とワーキングメモリの容量の同一性、3・ワーキングメモリとマスキングの関連)についても、行動実験と脳波実験を進め、おおよその目処をつけることを次年度の目標としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について、申請時に計画したよりも性能耐久性が高く安価な脳波キャップと実験消耗品(ジェル等)が新たに発売されたため、予定額よりも少ない支出となり、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
脳波実験のための物品費が予定よりも少額に抑えられているため、これらを実験代(被験者謝礼)に使うことで結果の説得力を高めていきたい。
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