研究課題/領域番号 |
26705012
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
岡本 尚子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (30706586)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数学教育 / 視線 / 教授-学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,教授-学習活動を視線移動の観点から捉えなおし,教授活動における教師の視線移動特性と,学習活動における学習者の視線移動特性を考察することで,適切な算数・数学の指導の在り方を生理学的に検討することである。1年目の本年度は,算数・数学問題解決時における「学習者」の視線移動特性を検討した。 算数・数学科の内容から,計算問題として「除法虫食い算」,図形問題として「立体構成」を実験課題に設定し,大学生を対象に,課題解決過程の視線移動を計測する実験を実施した。「除法虫食い算」とは,除法の筆算過程の空欄に適切な数値を埋める課題であり,「立体構成」とは,展開図を見て頭の中で立体を組み立てる課題である。 「除法虫食い算」実験の結果,被験者を短所要時間群と長所要時間群に分けることができた。短所要時間群の視線は,通常の筆算を解く手順とは逆に,筆算の下位部分から上位部分へと移動する傾向にあった。一方,長所要時間群の視線は,通常の筆算手順と同様に上位部分から下位部分へと移動する傾向にあり,ランダムな視線移動が多く見られた。 「立体構成」実験の結果,被験者を高成績群(正答率が高く,所要時間が短かった被験者)と低成績群(正答率が低く,所要時間が長かった被験者)に分けることができた。高成績群の視線は,展開図の外側の隣接する辺をたどっており,立体の構成を順序だてて考えていく傾向にあった。一方,低成績群の視線は,展開図の外側の離れた辺同士の位置を確認することが多く,共有する辺の関係を正確に把握することができない傾向にあった。そのため,所要時間の差に加え,正答率においても低いという結果が見られたと考えられた。 これらの成果より,視線移動計測は,学習者の正誤,所要時間に対する要因分析を行う上での基礎的なデータとなることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り,算数・数学問題解決時における「学習者」の視線移動特性を検討するために,大学生を対象とする視線計測実験を実施することができた。実験の結果,行動観察からは認められない問題解決過程の特徴を明らかにすることができ,順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
3年間を計画している本研究の2年目として,「教師」が,算数・数学問題を解決する学習者を観察する際の視線移動計測を行い,観察・助言過程を視線の特徴を明らかにすることを計画している。今年度の「学習者」を対象とした実験により得られたデータ特性とその考察をもとに,研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
視線計測装置の納入が予定よりも遅かったため,実験は計画通り実施できたが,研究発表のための国内学会参加が当初の予定よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,二者同時計測を含めた視線計測実験を実施するため,二台目の視線計測装置の購入,環境整備のための物品購入を予定している。また,学会発表のための旅費や参加費として使用する計画である。
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