研究課題/領域番号 |
26706002
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
柴田 憲治 東北工業大学, 工学部, 准教授 (00436578)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子ドット / テラヘルツ波 / トンネル効果 / トランジスタ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、「位置や形状を制御したInAs量子ドットの形成と、それを用いた単一電子トランジスタ素子の作製、伝導評価」を中心として研究を進めた。具体的には、精密なナノリソグラフィー技術と分子線エピタキシーを組み合わせることで、位置、形状、ドット対の量子力学的な結合の強さなどが制御された10 nm級のInAs QD構造を成長した。次に、形成したQD構造にナノギャップを有する金属電極を直接接触させて電気的にアクセスすることで、本研究遂行の鍵となる高い歩留まりと制御性での10 nm級QDを用いた単一電子トランジスタ素子の作製を試みた。作製した素子の伝導特性を低温・強磁場環境で評価することで、素子の伝導度や量子ドットの量子準位間隔などを評価した。 研究期間中に結晶成長装置に不測の故障が生じたため、結晶成長に関しては実験に4ヶ月ほどの遅れが生じたが、その間に単一量子ドットへのテラヘルツ照射下による物性評価に関する研究を大きく前進させることができた。特に、単一量子ドットのテラヘルツ分光手法の開発と、それによるドット1個に対する電子物性の観測に関する研究では大きな進展があり、単一量子ドットにおけるテラヘルツ照射下でのサブレベル間遷移の観測に世界で初めて成功した。さらにサブレベル間遷移のスペクトルは、電子系の相互作用により大きな影響を受けていることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子ドットの形成実験に使用していた結晶成長装置に不測の故障が生じたため、当装置の修理・調整が必要となり、位置・形状制御量子ドットの形成実験の再開までに4ヶ月を要した。一方で、その間に単一量子ドットのテラヘルツ分光手法の開発と、それによるドット1個に対する電子物性の観測に関する研究において大きな成果が得られたことから、総合的に判断すると本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、位置・形状制御した量子ドットを用いた単一電子トランジスタや2重結合量子ドットトランジスタの形成を引き続き推進すると同時に、新たに開発したテラヘルツ波による単一量子ドットのテラヘルツ分光による単一量子ドット内の電子のテラヘルツキャリアダイナミクスの観測・評価にも注力していく予定である。これらの研究を通して、テラヘルツ波を用いた単一電子・スピン状態の観測と制御に関する知見を蓄え、テラヘルツ光電子デバイスへの応用へと展開したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
量子ドットの形成実験に使用していた結晶成長装置に不測の故障が生じたため、当装置の修理・調整が必要となり、位置・形状制御量子ドットの形成実験の再開までに4ヶ月を要した。
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次年度使用額の使用計画 |
結晶成長に関しては実験に4ヶ月ほどの遅れが生じたが、その間に単一量子ドットへのテラヘルツ照射下による物性評価に関する研究を大きく前進させることができたため、当初の計画に大きな変更はないと考えられる。繰り越した研究費については、分子線エピタキシーによる量子ドットトランジスタ素子の作製とテラヘルツ光源の整備、素子のテラヘルツ光ダイナミクスの測定系の立ち上げに用いる予定である。
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