研究課題/領域番号 |
26706004
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
是津 信行 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10432519)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / ナノ材料 / 表面プラズモン / センサー |
研究実績の概要 |
26年度までに,プラズマエッチングマスクとしてイオン液体を用いることで,上に凸の円錐型ナノコーン構造の形成に成功した。光学特性を評価した結果,多重振動モードプラズモンの発現を証明した。さらに,その誘電率応答性を評価した結果,1fM以下の検出感度達成の見込みが得られた。 27年度は,複雑系多重モードプラズモンの発現とfMレベルの高感度検出を目的に,ナノコーン構造の中心角や弧の長さの制御に取り組んだ。具体的には,エッチングマスクに用いるイオン液体の“電場印加による粘性変化”現象の利用,さらに電極間に間欠的に直流を印可による粘性変化の動的制御に取り組んだ。 上記一連の取り組みのなかで,上期早々に動的マスクのブレークスルーがあった。新規開発した動的マスクは,固体の昇華現象を利用しており,当初案の「電場印加によるイオン液体の粘性変化」を利用するよりもはるかに取扱いが容易かつ安価である。加えて,ナノ構造を正確に加工できる可能性が高いと判断した。実際に,ナノコーン構造の中心角や弧の長さの制御,さらに多重振動モードプラズモン発現に適した金魚鉢型構造形成の見込みがついた。 以上より,次年度中期に予定していたバイオセンサーとしての評価に向けた準備に取りかかれる体制ができたため,当初予定していた物品費を人件費に振替え,バイオセンサー開発経験豊富な博士研究員を新規に雇用し,研究計画を前倒しして研究進めた。エッチングマスク溶液をナノメートル厚で塗工可能な成膜装置,プラズマの安定性向上,加えて,バイオセンサー表面の抗原抗体反応にかかわる吸着分子の吸脱着挙動のその場計測にむけた反応セルにおいて飛躍的な進捗を得た。成果の一部を2016年3月開催の日本応用学会にて発表した。その他,1件英語論文を投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H27年度上期において,動的マスクのブレークスルーがあった。今回新規に開発した動的マスクは,当初案の「電場印加によるイオン液体の粘性変化」を利用するよりもはるかに取扱いが容易であり,安価でもある。加えて,ナノ構造を正確に加工できる可能性が高い。これにより,当初計画よりも前倒しで,目的とする対称性の破れ構造を形成できる見込みがついた。これに伴い,プラズマ装置改良に加えて,次年度中期に予定していたバイオセンサーとしての評価に向けた準備に取りかかれる体制ができた。また,装置改良についても,当初案の装置を新設する必要がなく,既設のプラズマCVD装置を改造することで十分に実験可能と判断した。 当初予定していた物品費を人件費に振替え,装置開発に携われる機械系の知識と,バイオセンサーの開発に携われるセンサー開発の経験のある人材を雇用することで,より効率よく・前倒しして研究を進めることができた。具体的には,エッチングマスク溶液をナノメートル厚で塗工可能な成膜装置,プラズマの安定性向上,加えて,バイオセンサー表面の抗原抗体反応にかかわる吸着分子の吸脱着挙動のその場計測にむけた反応セルにおいて飛躍的な進捗を得た。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載通りの計画に沿って研究を進める。700nm/RIUの感度を達成することができれば,米国連携研究者の支援を受けて,バイオマーカーを用いた擬似血液中におけるin situ 検出を実施する。さらに,新規開発した非対称性ナノシェル構造の電磁場解析を進めるにあたって,ラボ内での解析が困難であれば国内連携研究者の支援のもと,これを解決する。そのほか,現状の金に代わる代替材料としてチタンやアルミニウム,銅などについてもあわせて検討する。
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