本研究では,金属ナノ構造と光の共鳴(局在プラズモン共鳴)現象に基づいた光化学・バイオセンサーの高感度化に取り組んでいる。具体的には,球状金属ナノ粒子の形状対称性を崩した『対称性の破れ構造』をもつプラズモニックナノシェルアレイを用いることで,従来では100 nMレベルの抗原抗体反応しか検出できなかった局在型表面プラズモン(LSPR)センサーの検出感度を100万倍以上の10fMレベル以下まで高感度化できる見込みがある。 これまでに,自己組織化プロセスにより基板上に単層集積したポリスチレンナノ粒子膜を大気圧プラズマにより等方的にエッチングした後,粒子表面を金薄膜で被覆することで,幾何形状に依存した特性を示す数々のプラズモニックナノシェルアレイとそのセンサー特性について検討してきた。前年度は,イオン液体や固体化した水をプラズマエッチングマスクとして用いることで,上に凸の円錐型ナノコーン構造の形成に成功した。対称性の破れたプラズモニックナノシェルをアレイ化すると多重振動モードプラズモンが発現することを明らかにした。さらに,その誘電率応答性を評価した結果 500 nm/RIUを実現した。 本年度は, ポリスチレンナノ粒子を単層集積するプロセスにおいて,コロイド分散液に界面活性剤を添加することで,ナノ粒子が基板上に均一に二層集積することを偶然見いだした。二層目に集積したナノ粒子を新たにプラズマエッチングマスクとして用いることで,上に凹の金魚鉢型のプラズモニックナノシェルアレイの形成に世界で初めて成功した。そこで,当初計画を変更し,二層目のナノ粒子をマスクとしてエッチング機構の物理モデル構築とその構造制御に傾注した。その結果,誘電率応答性は最大で2000 nm/RIU以上に到達し,世界最高感度を示すことを明らかにした。成果の一部は表面技術協会等で発表した。その他,1件英語論文を投稿準備中である。
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