研究課題
単結晶酸化物ナノワイヤは多彩な機能物性及び大気・水中での化学的安定性から、近年急速に注目を集めている研究分野である。本研究では、酸化物ナノワイヤが本来有するナノ機能物性の抽出・応用展開において根本的な障壁となっていた格子欠陥形成メカニズムを解明・制御し、極めて格子欠陥の少ない高結晶性絶縁体単結晶酸化物ナノワイヤを創成することを目的とする。当該年度は酸化物ナノワイヤにおいて最も研究が進んでいる材料の1つである酸化スズ(SnO2)ナノワイヤにおいて、酸化物ナノワイヤ結晶成長(気液固成長)中に共存する2つの結晶成長界面(固液界面・気固界面)により形成される結晶の差異に着目し、UV吸収測定(バンドギャップ)、単一ナノワイヤ多端子測定法(伝導性の空間分布)、電界効果トランジスタ素子測定(キャリア密度・移動度)、透過電子顕微鏡断面エネルギー損失分光(化学組成の空間分布)など多角的な評価を行うことにより、気固界面における結晶成長が格子欠陥を形成する決定的な実験証拠を得ることに成功した。加えて、明らかにした結晶成長メカニズムに基づき結晶成長制御を行った結果、従来比で低結晶性に由来する電気伝導度を7桁低減することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
H27年度は①種々の物性測定手法により単結晶酸化物ナノワイヤを多角的に評価し、格子欠陥形成メカニズムを解明すること、②格子欠陥を劇的に抑制した高結晶性絶縁体酸化物ナノワイヤを創成すること、の2点を当初の目的としていたが、伝導性・化学組成の空間分布評価を行い、臨界核結晶成長メカニズムとの相関性を検証することで格子欠陥形成メカニズムの本質に迫る実験結果を得ることに成功し、従来抑制が困難であった低結晶性に由来する電気伝導度を劇的に低減することに成功したため。
前年度までに作製・評価した単結晶酸化物ナノワイヤを種々の物性測定手法により多角的に評価し、格子欠陥形成メカニズムの更なる解明を試みる。具体的には、前年度までに一定の成果が得られているUV吸収測定、単一ナノワイヤ多端子測定法、電界効果トランジスタ素子測定、透過電子顕微鏡エネルギー損失分光法を種々の酸化物ナノワイヤ材料に適用し、現在までに明らかにしている格子欠陥形成メカニズムの深化を目指すと共に普遍性を検証する。加えて前年度創成に成功している高結晶性絶縁体酸化物ナノワイヤを用いて、本研究課題の最終目標である新奇ナノ機能物性の探索を開始する。
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Nano Letters
巻: 15 ページ: 6406-6412
10.1021/acs.nanolett.5b01604