研究課題/領域番号 |
26706006
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
矢野 隆章 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (90600651)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノバイオ / プラズモニクス / 表面増強ラマン散乱 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、タンパク質のダイナミクスを機能発現に関連性が深い時間スケールでナノスケールで分光分析する手法を確立し、ナノスケールの摂動効果を利用したアクティブなアプローチによって、単一タンパク質の時空間ダイナミクスと機能の相関関係を明らかにすることである。本年度は前年度に構築したテラヘルツ領域の分子間振動を分光検出するシステムの改良を行った。具体的には10cm-1以下の低波数分子振動を測定可能な近接場分光システムに金属プローブによる機械的・電気的摂動印加機能を付加し、外部局所摂動印加によるタンパク質分子の機能・構造制御を可能にするシステムを構築した。実際に金属プローブ探針にレーザー光を照射して低波数領域の近接場振動分光測定を行ったところ、探針を近づけた時にのみ低波数領域において強い背景光成分が観測された。これは探針からの発光の可能が高く、今後対策の必要がある。 高波数側の振動モードにも着目し、金ナノギャップ間に介在する生体低分子(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸から構成されるRGDペプチド)の電場増強ラマン分光分析を行った。単一分子レベルの検出を示唆するラマン散乱のブリンキング現象が観測され、金属ナノギャップを用いると高感度で生体分子の振動分光計測が可能なことがわかった。さらに、Amide IIバンド(1544 cm-1)は増強検出されたが、Amide Iバンド(1680 cm-1)は消失し検出されなかった。この原因については今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属プローブによる機械的・電気的摂動印加機能を具備した低波数および高波数近接場分光顕微鏡が開発され、タンパク質分子の機能・構造制御を可能にするシステムが構築されたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに開発した新奇分光手法を駆使して、タンパク質分子の時空間ダイナミクスと機能の相関関係を明らかにする予定である。金属探針先端の光誘起熱効果が問題になるようであれば、低熱発生かつ高い電場増強効果を有する高屈折率誘電体ナノ構造の利用を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
原子間力顕微鏡カンチレバープローブの購入数(使用数)が当初予定していた数より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
交換頻度の高い原子間力顕微鏡カンチレバープローブの購入に充てる予定である。
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