研究課題/領域番号 |
26706008
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
菅 哲朗 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30504815)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタマテリアル / テラヘルツ / 円偏光 / チューナブル / 空気圧 / MEMS |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでテラヘルツ帯に存在しなかった、動的な偏光変調フィルタの実現を目的とする。そのために、スパイラルの金属構造が右ネジ巻きか左ネジ巻きかのキラリティに応じて、左もしくは右円偏光との選択的な共鳴性を持つことを生かし、テラヘルツ(THz)帯円偏光メタマテリアルを提案する。平面スパイラルの上下の機械変形方向の選択により、立体構造のキラリティを左右切替可能なので、一つのデバイスで左右両方の円偏光と共鳴し、円偏光分光に適用できる偏光変調フィルタを実現可能となる。 本年は、前年度までに空気圧を利用することで、スパイラル構造を上下方向に対称性よく駆動することができるようになったので、スパイラルのキラリティを空気圧の方向で変えた状態における偏光変調状態の変化をTHz時間領域分光装置により評価した。その結果、構造の変形方向が上方向か下方向かに応じて、透過したテラヘルツ波は右円偏光もしくは左円偏光となっていることが分かった。また、この構造を透過したテラヘルツ波の強度はこの構造の変形方向を変えてもほぼ一定であり、偏光だけが変わることが分かった。このような対称性のよい円偏光制御をテラヘルツ光で実現したデバイスはこれまでになく、本研究で初めて達成できた成果といえる。また、今回得られた偏光変化の大きさは、楕円率角で最大28 度と、分光に適用可能な、十分な大きさのものであることが確認された。 また、前年度までに整備していたCOMSOLによるシミュレーション環境を用いて、スパイラル構造の応答の計算による評価を行ったところ、実験で得られた透過スペクトルを精度よく再現できており、実験結果の妥当性の裏付けとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上下方向のスパイラルの変形時のTHz偏光変調スペクトルが、非常に対称性がよく、また、実用可能なレベルの高い偏光変調応答が得られており、非常にオリジナリティの高い成果が得られ、ジャーナルでの成果発表につなげられたので、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度の推進方策に引き続き、計算などによる応答メカニズムの解明を進めていく予定である。目標としては、広帯域化や透過特性の向上であるが、スパイラルの寸法などを変えて計算を進めることで、実用性の高い構造の探索のための指針を得たいと考えている。
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