研究課題/領域番号 |
26706014
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
乗松 航 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30409669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面物性 |
研究実績の概要 |
本研究では、種々の炭化物の熱分解により、様々な特徴を持つグラフェンを成長させることを目標としている。具体的には、(1) SiC上炭化物からのグラフェン・電極・酸化膜同時成長、(2) SiC上B4C薄膜からのホウ素ドープグラフェン成長、および(3) SiC上アモルファスカーボンのグラフェン化、である。 (1)については、SiC上に、炭化チタンおよび炭化アルミニウムを堆積させ、その熱分解によりグラフェンと電極、および酸化膜を同時に形成する。これまでに、パルスレーザー堆積装置を導入し、成膜条件の最適化を行うことで、SiC基板上に炭化チタンと炭化アルミニウム薄膜を成長することに成功した。さらに、それぞれの熱分解によるグラフェン化にも成功した。 (2)に関しては、同じ手法により、SiC基板上に炭化ホウ素薄膜を形成した。2年目に導入した基板加熱装置を用いて実験を行った結果、基板温度によって、炭化ホウ素薄膜がアモルファスになる条件と単結晶としてエピタキシャル成長する条件を見出した。その後、加熱処理を行い、どちらの炭化ホウ素薄膜もグラフェン化した。その電気伝導測定を行った結果、炭化ホウ素熱分解グラフェンは正孔伝導を示すことがわかった。これは、グラフェン中にホウ素がドープされていることを示唆する。 (3)については、SiC基板上に厚さ1nm程度のアモルファスカーボンを真空蒸着し、熱処理によるグラフェン化を行った。その結果、1200℃以上の温度での加熱により、結晶性が向上することがわかった。 今後は、新規導入装置も合わせて用いることで、これらをさらに発展させていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年目までに、SiC単結晶基板上への炭化アルミニウム、炭化ホウ素、および炭化チタン薄膜の成長条件を明らかにしてきた。初年度に導入したパルスレーザー堆積装置に、基板加熱機構と反射高速電子回折装置を付設し、炭化物薄膜の条件の最適化と構造解析を行った。その結果、どの炭化物も、SiC基板上にエピタキシャル成長し、膜厚を15nm以下で制御することができた。また、これら炭化物の熱分解によるグラフェンの形成に成功した。SiC上に蒸着したアモルファスカーボンのグラフェン化では、蒸着後の真空加熱により、グラフェンの結晶性が向上することがわかった。これら結果の中でも、炭化ホウ素熱分解グラフェンについては、Hall効果測定を行ったところ、正孔伝導であり、グラフェン中にホウ素がドープされていることがわかった。以上を含め、得られたそれぞれのグラフェン試料に対し、電気伝導測定、磁化測定、および角度分解光電子分光測定を開始し、その電子状態の詳細についての実験を進めている。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでに引き続き、各炭化物薄膜とその熱分解グラフェンの高品質化および新規物性開拓を進めていく。 具体的には、パルスレーザー堆積装置にロードロック室を導入し、実験のスループットをさらに向上させて効率よく進めるようにする。この装置を用いて、薄膜グラフェンの高品質化と、各炭化物薄膜のパターニングにより機能化を行う。まず、SiC基板上全体に炭化アルミニウムを、端に炭化チタンを堆積し、グラフェン化することで、グラフェン・電極・酸化膜の同時成長を目指す。また、炭化ホウ素を部分的に堆積し、グラフェン化することで、SiC由来のn型グラフェンと炭化ホウ素由来のp型グラフェンによる、グラフェンpn接合の作製を行う。その後、それらの電子状態の特徴について明らかにしていく。
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