研究課題/領域番号 |
26706015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
治田 充貴 京都大学, 化学研究所, 助教 (00711574)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光法 / 電子状態マッピング / 状態分析 |
研究実績の概要 |
本研究では球面収差補正器を装備した走査型透過電子顕微鏡(STEM)と電子エネルギー損失分光法を組み合わせた、遷移金属酸化物における酸素の電子状態マッピングを原子分解能で可視化するものである。
本年度は、外乱による装置の不安定性により原子分解能での元素マッピングの性能が十分確保できなかったため、予想通りの研究進展が見込めなかった場合に想定していた研究テーマである、原子分解能での元素の定量評価法に関する研究に着手した。そのため研究対象を酸素原子からEELSスペクトル強度の高い金属酸化物中の金属側にし、2次元ではなく1次元での原子分解能での元素の定量評価法の研究を行った。その結果、FeやMnの金属におけるEELS測定の空間分解能を評価することができ、さらに定量値の系統誤差を求めることができた。この研究結果は今後広く活用されると考えている。また、この研究結果にか関して研究発表を行った。国内1件[招待]、国際3[1件招待、2件一般]、ならびに国際誌(M. Haruta, et al., ACS Nano, 10, 6680-6684 (2016))への論文投稿とした。
また一方で、原子分解能での電子状態マッピング実現に向けてハードの安定性だけではなく、ソフトウェアの改善によるマッピングの基礎的研究を行った。具体的には、試料ドリフトやノイズさらに電子線ダメージの改善法に関する基礎的研究を行った。その結果、状態マッピングを得るために必要なS/Nの良いスペクトルを原子分解能で得る手法を大よそ確立するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子分解能でのマッピングが可能な性能を本来有している装置ではあるが、設置環境による外乱のため安定したマッピング像を得ることが困難であったため、マッピング研究に関しては当初予定していた進捗に比べやや遅れている。一方で、状態マッピングから元素組成の原子分解能定量評価では予想以上の良い結果を得ることができた。
また、たとえ現状世界一安定している装置であっても、最低限の外乱や電子線ダメージの問題などは必ず有している。そこで今年度はソフトウェアの改善研究に取り組んだことで、結果的に後々必ず問題となるであろう上述した問題点まで克服することができるスペクトル測定法を考案することができ、結果として次年度以降の問題点を既に克服できたことになり、最終年度に応用研究を進める上では順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により手法に関しては大よそ確立できてきたため、取り組んだ原子分解能での測定法を、実際予定している試料に対して適応していくことで、当初計画していた電子状態マッピングに関する研究を進めていく。
ダメージやデータ数等の関係性上、 ダメージに比較的強く、またユニットセルサイズの大きくない系から研究を進めていき、 より複雑でこれまで測定が困難であった系に対して応用を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていくうちに本研究で使用する実験データ量が非常に大きく現在のシステムでは不十分なことに気が付いた。そこで研究遂行のためには、制御PCの64bit化を行う必要性が出てきたため、平成29年度分の補助金と合わせてこれを購入することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
電子顕微鏡用制御ソフトのPCの64bit科の為に主に使用する。
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