研究課題/領域番号 |
26706017
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
鈴木 健仁 茨城大学, 工学部, 講師 (60550506)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | テラヘルツ / メタマテリアル / 負の屈折率 / ゼロ近傍屈折率 |
研究実績の概要 |
メタマテリアルは負の屈折率 n=-1 を設計することができ、エバネッセント成分を復元し、回折限界を超えたパーフェクトレンズやスーパーレンズを実現できる可能性がある。負の屈折率は、負の誘電率と負の透磁率の両立により実現できる。負の屈折率を実現する方法の1つに、プラズマ周波数以下の金属細線や金属スリットなどの負の誘電率構造中に、分割リング共振器などの負の透磁率を示すメタアトム素子を装加する方法がある。もう1つに負の誘電率と負の透磁率を同時に示すメタアトム素子を用いる方法がある。 本研究ではまずは前者の方法に着目し、誘電率がゼロ近傍となる金属スリットアレー凹レンズ構造に、透磁率を制御できる分割リング共振器を装加し、インピーダンス整合の取れたゼロ近傍屈折率構造の設計を進め、そこで得られたノウハウをもとにテラヘルツ波帯で負の屈折率n=-1となるパーフェクトレンズやスーパーレンズを目指している。加えて実験系の立ち上げと構築も大きな課題である。 最初に設計ツールとして、メタマテリアル素子の実効屈折率を評価するFortranプログラムコードの作成から進め、バグの修正などを経て、構築が完了した。解析時に主に用いる反射S11と透過S21から安定的に実効屈折率を導出する設計ツールと、テラヘルツ時間領域分光法での実験時に用いる過渡パルスの応答から安定的に実効屈折率を導出する設計ツールの2つを構築した。研究室で蓄積してきたメタマテリアルやアンテナの設計ツールとの互換性や今後の拡張を見据え、Fortranプログラムコードにより構築を進めた。 一方で後者の方法にも本設計ツールも活用しつつ、パラメータの最適化を進めたところ、非対称裏表カットワイヤーにより実験的に非常に低損失な負の屈折率を実現できた。当初の計画していなかった非常に良好な結果が導かれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初に研究室にて有していなかった安定してメタマテリアルの実効屈折率を評価できる設計ツールを準備した。その他には、メタアトム素子としては3次元に拡張された金属マイクロコイルにも拡張し、作製時に起こると予想される配向ずれも解析により評価した。実験系の立ち上げとして、関係する研究成果として3件の論文が採録され、4件が条件付き採録となっている。さらに本支援により購入したテラヘルツ波イメージャーT0832(日本電気株式会社)の動作確認と実験系構築のノウハウ蓄積のため、研究室で独自に所有しているテラヘルツメタマテリアル素子を測定し、テラヘルツ波の制御を確認した。本実験には丁寧な準備も必要不可欠なため、実験系のマニュアル化も進めた。派生的な結果として非対称裏表カットワイヤーを用いてテラヘルツ波帯で非常に低損失な負の屈折率(0.419 THzでn=-4.6+j0.26)を実現した。2015年1月30日に電子情報通信学会テラヘルツ応用システム研究会で口頭発表した。2015年2月5日に日刊工業新聞にて研究成果が報道された。2014年11月17日に文部科学大臣を表敬訪問し、一連のテラヘルツメタマテリアルに関する研究説明を行った。
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今後の研究の推進方策 |
実験系の立ち上げと構築を引き続き進める。金属スリット構造がゼロや負の誘電率となるのは、TEモードの場合である。既に研究室で有しているTMモードの場合の設計ツールをもとに、TEモードの場合の設計ツールの構築を進め、設計過程に反映する。解析にはモードマッチング法を用いる。テラヘルツメタマテリアル素子の実用化に向けては各種の設計ツールを準備することが重要である。電磁界シミュレータでの解析では解析結果は表示されるが、動作原理の理解や拡張構造を生み出すには、物理的な解析法の確立が不可欠である。さらに条件付き採録となっている4件の論文の採録を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画以上に進展が予想されたため、前倒し請求を行ったことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き実験系の立ち上げと構築を進めるため、テラヘルツ光源の購入に使用する。
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