本研究は、周期空間反転AlGaAsを積層方向に互いに空間反転するよう表面活性化接合を繰り返すことにより、AlGaAsを用いた3次元2次非線形フォトニック結晶を開発することを目標としてきた。本年度は、接合界面のアモルファス層の解消をめざすのではなく、AlGaAsのバンド間発光の誘導放出による光増幅を用いてアモルファス層起因の光吸収を補償する基盤技術の確立に取り組み2つの成果を得た。 周期空間反転GaAsテンプレート上にpnホモ接合ダイオードを作製し、周期空間反転GaAs pnホモ接合ダイオードの整流特性を初めて確認し、同ダイオードからの電流注入による自然放出光発光を初めて観察した。その発光強度は通常のGaAs pnホモ接合ダイオードからのそれと比べて1/5程度であった。さらに注入電流密度を大きくすることで周期空間反転GaAs構造で光増幅が可能であることを初めて示した。発光低下の原因は逆位相境界(反転層と非反転層の境界)が非発光性再結合中心として機能していることを明らかにした。 また導波路型デバイスでの応用をみすえ、キャリアと光を閉じ込めることができる周期空間反転GaAs/AlGaAs pinダブルヘテロ接合ダイオードを作製し、ダイオードの成長基板温度を540°Cで作製することで同素子の整流特性と電流注入による発光を同様に確認した。 これらの成果は、電流注入機構をもつ新しい波長変換素子の実現と大幅な変換効率の向上の可能性を示し、半導体レーザと化合物半導体波長変換素子のモノリシック集積を実現するための大きな一歩である。
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