研究課題/領域番号 |
26706024
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
武田 伸一郎 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (80553718)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射線 / 半導体検出器 / ガンマ線 |
研究実績の概要 |
放射性同位体からのガンマ線を検出し3次元位置を再構成する技術は、核医学や放射性物質のモニタリングなど、研究分野を超えて応用できる基本的な技術である。これまで、コリメータを用いる手法が採られてきたが、コリメータがガンマ線に対して透明になる200keV以上の帯域で感度を失うため、高エネルギーガンマ線放出核種の位置決定は、依然として困難なままである。本研究では、申請者らが次期X線天文衛星用に開発を進めてきた宇宙ガンマ線検出器技術を基礎として、コンプトンカメラによる放射性同位体「3D」可視化技術の確立と、実用の現場への展開を目的とする。 平成26年度には、この研究の核となるプロトタイプ装置の製作を開始した。このプロトタイプは、将来的には医療イメージング分野における応用を目指すものであり、2台のコンプトンカメラを近距離対向配置したオリジナルのデザインになっている。撮像中に被写体の周囲を回転させることで、コンプトンカメラによる「3D」再構成アルゴリズムを研究する上で、良質の多角度投影データを収集する計画である。プロトタイプに用いるコンプトンカメラは、我々のグループが独自に開発した、SiとCdTe半導体の両面ストリップ検出器で構成する。大幅な開発期間の短縮と製造コストの削減を達成するために、元々は福島における放射性物質の可視化実証実験用に製作したものを、あらたに本課題の専用機として改造を進めた。加えて、医療イメージングでは、空間分解能を向上させるために、如何に被写体までの距離を小さくできるかが重要になる。そのため、新たな検出器ハウジングとして、ペルチェもしくは水冷式の冷却ポートを備えた、ベリリウムウインドウ付き小型真空容器を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、申請者自身が開発してきた最先端の宇宙ガンマ線検出器技術を用いて、コンプトンカメラの提案から30年あまり経った今、世界で初めてSi/CdTeコンプトンカメラ方式による「3D」可視化技術を確立、核医学と放射性物質モニタリングの両面で、実用化を図る点に最大の特色がある。この研究の核となるのが、新しいプロトタイプ装置であり、コンプトンカメラによる初めての、実用的な、「3D」再構成アルゴリズムを研究するための実データを取得する。現在、このプロトタイプ装置を精力的に開発中である。これまでに、システムの核である医療イメージング用途のコンプトンカメラの製作、近接撮像を実施して良質なデータを取得するために必要となる小型真空容器ハウジングの製作をおこなった。これらを組み合わせた試験を進めている。これは当初の計画の通りである。
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今後の研究の推進方策 |
現在開発中のプロトタイプ装置を完成させ、平成27年度中には「3D」可視化のための実践的な研究を開始する予定である。非密封線源ファントムやラット等の小動物を用いた実験を、群馬大学医学部や理化学研究所と共同して進める。小動物の取り扱いや投入薬剤の選択に関しては、生物系や医学系の研究者と綿密な打ち合わせを行い、慎重に実験をすすめる。群馬大学医学部や理研には、最新鋭の小動物撮像用PETやX線CTなどのイメージング装置が導入されている。従って、同一の撮像対象を用いて、既存のイメージング法との比較が可能であるという、他の研究機関には無い利点がある。このメリットを生かしつつ、コンプトンカメラの優位性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンプトンカメラの回転駆動系に使用するために予算を確保していたが、回転させるハウジングの製作が予定よりも遅れたため、駆動系の製作をやや後ろに延ばさざるを得なかったために生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で開発する医療用コンプトンカメラのプロトタイプ装置の回転駆動系を製作するために使用する。
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