放射性同位体からのガンマ線を検出し三次元位置を再構成する技術は、核医学や放射性物質のモニ タリングなど、研究分野を超えて応用できる基本的な技術である。これまで、コリメーターを用いる 手法が採られてきたが、コリメーターがガンマ線に対して透明になる 200 keV 以上の帯域で感度を失 い、高エネルギーガンマ線放出核種の位置決定は、依然として困難なままである。本研究は、申請者 らが次期 X 線天文衛星用に開発を進めてきた宇宙ガンマ線検出器技術を基礎として、Si/CdTe コンプ トンカメラによる放射性同位体「3D」可視化技術の確立と、実用の現場への展開を目的とする。 本年度は、これまでに製作したプロトタイプ機を用いて、実践的な実証研究を進めた。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の放射性同位体(RI)管理区域における、線源の使用変更申請を原子力規制庁に申請し承認された。これにより、大学構内で非密封線源を用いた実践的な研究が行えるようになり、飛躍的に研究を進めることができた。プロトタイプ機2台をRI管理区域に新設したイメージング装置開発室に設置した。111-In や 125-Iといった液体線源からファントムを製作し、対向配置したプロトタイプ機で撮像実験を行った。これまで開発してきた独自の再構成ソフトウェアを用いることで、互いに14 mm 離れた複数の111-In 点線源を3次元空間の中で、分離することができた。現在、空間分解能のエネルギー依存性の詳細評価を進めているところである。コンプトンカメラを用いた3次元可視化技術を確立し、その展開に向けて大きな足がかりを得た。
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