本研究計画における課題であるp進群の法p表現論について,引き続き研究を行った.これまでの研究成果として,既約法p表現の分類定理を,パリ南大学のHenniart,トロント大学のHerzig,Jussieu数学研究所のVignerasとともに得ている.その際に重要な役割を果たしたのがプロp岩堀Hecke環と呼ばれる,考えているp進群に付随する環であり,この環の表現論がp進群の法p表現論と深く結びつくことが証明の鍵であった.プロp岩堀Hecke環も同種の分類定理を示すことができるが,両者の分類定理の間の関係については,昨年度のHenniartおよびVignerasとの共同研究で深く調べた. 今年度は,プロp岩堀Hecke環自身の表現論をさらに深く調べた.特に,既約表現の間の拡大の計算を行った.既約表現は,すでに本研究計画において前半に得られた結果と,OllivierおよびVignerasにより得られた結果とを組み合わせることで分類を行うことができる.今年度は,既約表現同士の間の拡大を,この分類定理による記述により与えた. 重要な役割を果たしたのが,種々の「放物型誘導」である.プロp岩堀Hecke環には,見かけ上八個の放物型誘導が存在する.昨年度の研究で,これらは本質的に二つしかないことがわかっている.一つが真の放物型誘導であり,これまでにすでに深く調べてきた.拡大の計算にはもう一つの放物型誘導も重要である.二つの放物型誘導はとある対合により移り合うため,今年度はまずこの対合について深く調べ,知られている放物型誘導の性質から,もう一つの放物型誘導の性質を導いた.また,この結果と超特異表現同士の間の拡大の計算(直接行える)を使い,拡大の計算をすべての場合に行った.これらの結果は論文としてまとめ,現在投稿中である.
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